「不思議な雰囲気で神降臨!」
本日は、9月25日(土)西宮の兵庫県立芸術文化センター公演のリポートです。
このホール、カツァリス公演との相性はよく、過去何回も開かれていますが、毎回ほぼ満員で盛り上がります。いつも休日の午後なので、プロムナードコンサート的な雰囲気で、リラックスした中、楽しいコンサートとなるのが通例です。前回公演(2008年)では、アンコールにフランス映画音楽メドレーを弾いて大喝采でした。では、本日はどうだったでしょう。。。
開演前にアナウンス&案内。どうもカツァリスが冒頭に即興演奏を弾くので、遅れてきた人はその間に着席するようにとのこと。これは実は茅ヶ崎でもそれを意図していたようで、カツァリスは今回のプログラム前半を集中して弾きたいために、途中入場者や拍手で中断されるのを嫌がったというのが真相くさい。
カツァリスにしてはそのような注文は珍しいのだが、それだけ集中して弾きたいという意欲の表れなんでしょう。
その即興演奏ですが、今日は実に気合入りまくり。通常は10分で4-5曲のテーマなのだが、今日はほぼ15分くらいかけてこれまででてきた即興フレーズのオンパレード。今日もご機嫌ムード漂ってました。
さていよいよ本プロ。ところが、カツァリスの思いとは裏腹にどうも会場の集中力が増さない。これは仕方ないのかもしれないが、2000名超の満員のホールでピアノ1台で、集まっているお客さんは過去のいつものプロムナードコンサートの気軽なノリ。事実、前回までのカツァリスのコンサートはそんなゆるーい感じだったのだけど。
しかし、カツァリスはいつになく聴衆の集中力・静寂を要求するような弾き方でpppを強調。でもその静寂をやぶぶるような雑音で、なんだか空回り。一曲ごとにガサガサしたり、途中で意図に反して拍手が入ったり。拍手が入った時には、ごめんと客席に手を合わせるカツァリス・・・。よっぽど集中したいのね。。。
決してこの日の観客がマナーが悪かったというわけでなく、ふつうレベルだと思うのですが、実際こういう要求はカツァリスには珍しいんですよ。まあ、私の両隣のババアは、ずっとガサガサちらしをめくったり、ビリビリと音のするビニールの上でアンケート書いたり、うるさかったのは事実ですがね。。。
そんな会場の雰囲気のせいか、いまいち調子に乗りきらない不完全燃焼の前半が終了。
そして、後半。例のショパンコンチェルトソロバージョン。前半と様変わりして、神降臨となりました。
第1楽章から、ぐいぐいと引っ張っていくカツァリスの演奏。観客も自然と集中力を増し、引き込まれる。ここにきてかなり練られてきたこの曲について確信めいたものが彼の中に出てきたのか、北京では慎重だったのに、どんどん攻めの演奏。最後の和音では、手刀切るポーズで気合の音止め。あれは、パフォーマンスだけじゃなくて、心の底から音楽に没頭している結果、思わず出てしまってるのだと思います。
そして、あの美しい第2楽章。観客も身じろぎせず、あふれ出る荘厳な音にくぎ付け。ときおり、ふっと聴衆が息を抜きそうになると、手をひらひらさせながら鍵盤を指さし、注目をあおり、集中を維持。または口に指をあててシーッとしながら、pppの世界へ引きずり込む。。。なんだか単なるパフォーマンスと違って、鬼気迫るカツァリスの没頭具合は、最近見たことがなく、ちょっと怖さも覚えたくらい。この第2楽章は、神公演だった軽井沢を超えた、超名演だったと思います。一番前でみていた Copin姉さんによれば、この2楽章でカツァリスは涙を流しながら弾いていたそうです!
第3楽章、完全にピアノと一体化した神は、ほんとに変幻自在に音色を変化させ、圧倒。とくにオケパートとピアノパートが激しく交差するところで、完全に音色を使い分け、テクニック的に破たんなく、これでもかとスピード加速させたところは、もうヤバすぎです。この瞬間、完全にこの日の後半に「神降臨」したと認定しました。脱帽です。
そして、連日盛り上げているアンコールです。
1曲目、チャイコフスキー秋の歌。いつもの曲なのですが、この日は新しい味付けを加えていて、ワルツ・幻想即興曲のように裏メロ強調など、とうとうアンコールピースでも崩し始めたなあ。
2曲目、おなじみバンジョー。カツァリスのリトマス試験紙、この日の調子よさを十分証明していました。
3曲目、マルチェロ(バッハ編)アダージョ。意外に久しぶりに聞くような気もするが、いい音してます。ちゃっかりとCDアレグロの宣伝を舞台上からアナウンスするカツァリス(笑)
4曲目、シューベルト(リスト編)セレナーデ。文句なし。
5曲目、ちょっと謎なのだが、弾く前に、「 I play something funny 」と言って涙を流すふり。弾き始めた曲は、ショパンソナタ第2番3楽章の葬送行進曲。笑いおこる会場。おそらく、ここから変奏していって、即興になるんかと思ったら、そのまままじめに曲が終わった・・・前回の茅ヶ崎に続いての謎。間違ったわけではなさそうだし、冒頭の言葉の意味も不明。。。
いろいろ考えたのだが、おそらくカツァリスはこの日あまりに没入していてハイテンションでおかしなことを言っただけなのか、それとも涙を流して弾いていた自分への照れなのか、ちょっとよくわからなかったな。
終わってツイッターを見ると、「楽しかった」とか「笑った」とか「自由できままな演奏で感心した」とか明るくほめてるツイートが多かったですが、私はとてもそんな感想はもてませんでした。あのすさまじいカツァリスの集中力とそれにより強いられた緊張感と、研ぎ澄まされた音の数々を思い出すと、いつものようにカツァリスの余裕綽々なエンターテイナーぶりを発揮されたなあという感想ではなく、求道者カツァリスの側面を見た気がして、単純に「楽しかった」とは思えませんでした。25年間ずっとカツァリスを聞き続けている中で、このような感覚は久しぶりです。
この日だけではなく、今回のツアーでのカツァリスの集中力とコンディションの良さは近来になく素晴らしいものです。あれだけ、ショパンイヤーにショパンを弾くのを嫌がっていた彼がここまでの演奏を繰り広げてくれるのはうれし限りですが、逆に言えば、今後これだけの気合でショパンを弾くことなど2度と無いのではないかと思われます。今回のツアーはのちに考えても「伝説」になるのではないかとさえ思います。これだけいい演奏をし続けてもまだ「底」をみせずに進化しそうで、ツアーのハイライトである浜離宮公演にはどうなるんだろうとますます期待大きくなります。
さて、追っかけレポト、次回は明日日曜日の福知山公演です。
引き続き告知します。
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オフ会を開催いたします。
会の趣旨としては、カツァリスが好きな人なら誰でも気軽に参加していただけるものです。
「カツァリスを囲む会2010」
日時:10月16日(土)13:30-16:30
場所:東京・赤坂見附駅近辺(参加が決まった方にのみお知らせします)
参加費:5,000円(予定)事前振込
ワンドリンク、軽食、デザートつき
内容:
・カツァリスからの近況報告
・カツァリスと自由に懇談、サイン、写真
・参加者同士の懇親
・希望者のみカツァリスと連弾
(希望の方は、5分以内の曲を楽譜持参でご用意ください。希望者が
多い場合は抽選にさせていただきます)
申し込み方法など、詳しくはこちら。