今回、東京と兵庫とわずか2回の来日公演の最後となった兵庫公演ですが、私の前の席に座っていた典型的な関西マダム(つまりオバチャン)がオルガンシンフォニーが終わったあとに隣の人に大きな声で話した一言が今回のツアーの感想に尽きます。
「こら人間ワザやないわなー、アカンでこれは」
関西のオバチャン恐るべし。見事にカツァリスの本質を突いた一言です。特に最後の「アカン」はいわゆる若者用語でいう「ヤバイ」の意味ではなく、「兄ちゃん、その年でなんでこんなムチャなことしてんねや、アカンで」という意味の「アカン」に違いありません。
今回のプログラム、我々は麻痺してしまっていますが、考えてみれば変です。前半のベートーヴェンは葬送行進曲はともかく、スプリングソナタとクロイツェルソナタのピアノトランスクリプション。後半はサンサーンスのトランスクリプション。混じりっけなしのオール編曲ものプロ。かつてのカツァリス本人ですらプログラムはオーソドックスなものとマニアックなものを混ぜるのがポリシーと言っていたにもかかわらず。。。ひとりデュオ、ひとりコンチェルト、ひとりシンフォニーともはやこの辺りでは驚かなくなっていますが、チャキチャキの若手がやるならともかく、70歳超えたお爺さんですよ。。。
70歳こえて知名度あるピアニストなら、まあ、ヨボヨボ歩いてきて、テンポゆったりとシューベルトとかモーツァルトくらいをもったいぶって弾けばそれで十分「大家扱い」してもらえるわけです。それどころか、毎回編曲ものを含む新レパートリーもってきて、目を輝かせながら、あれ弾く、今度これ弾く、やれチャイコの交響曲4-6番も編曲したい、録音したい、時間が足りないと、まったく変わりません。かっつぁんがかつてのホルショフスキーやチッコリーニのようになれる姿が想像できません。
こうなれば我々も腹を括るしかありません。いつまでもムチャにつき合います。心配ですが、仕方ありません。前出のオバチャンなら「いつまでも若いおもたらアカンで、いつまでもムチャしたらアカンで」となるでしょうが、本人がご機嫌でしかも今回のように十分弾けるところをまだ見せてくれるのですから。
簡単に、兵庫公演だけを振り返ると、演奏自体は東京公演のほうが気合入っててガッチリしてたと思いますが、ホールが響かず、特にオルガンシンフォニーの響きを堪能できなかったのが、兵庫では十分ホールに響き渡ったので、その点で兵庫のほうがよかったです。マジでオルガンシンフォニーの第2部のグワン、グワンって弾くところ、オルガンの音がしました! (CDだともっと本当にオルガンに聴こえるけど)
たぶんもう弾かないでしょうが、あと何回かいいホールで聴いてみたかったですな。
アンコールは4曲で、葛飾と同じでしたが、ラフマニノフの部分がピアノ協奏曲第2番だけでなく、パガニーニラプソディも入っていました。
アンコール
1.コンスタンティニディス「ギリシャの島々の8つの舞曲」から第1曲「シルトス」
2.ボルトキエヴィチ「6つのピアノ組曲 Op.48」から第2番「3/4拍子」、ラフマニノフパガニーニラプソディとピアノ協奏曲第2番の即興曲
3.ショパンワルツOp64-2
4.さくらさくらの主題による即興曲
ラフマニノフ終わりでは禁止されているはずのブラボーが飛び出し、スタンディングオベーション発生。なかなか感動的でした。
その他、終演後に少し話した内容
・ 次回来日公演は未定。でもたぶん来年もあると思う。
・ でも何弾くかまったく未定だしー。(オールショパン?)
・ ネヴィルマリナーと録音したハイドンの協奏曲がまだリリースされていない!(プンスカ)
・ 新しいヤマハのCFXやっぱええでー
・ 私)来日回数34回じゃなくて37回やでー カ)えー、オマエが前教えてたやんか! 私)ちがうちがう! カ)えー、37回やな、わかったわ
ということで、今年のおっかけも終了。来年あるかどうかわかりませんが、皆様お元気で。