アーカイブ: 2019年6月

宮沢明子さんとカツァリス

少し前ですが、 ピアニストの宮沢明子さんが4月に亡くなっていたとニュースになりました。
https://tower.jp/article/campaign/2019/06/04/01

これといって仲のいい演奏家がいないカツァリスにとって、宮沢明子さんは数少ない親友と呼べる人だったでしょう。
伊熊よし子さんのインタビューにでは宮沢さんが、「シプリアン・カツァリスとは姉弟のような関係」と答えています。

また、2008年10月の浜離宮公演では、アンコールに飛び入り参加し、カツァリスとを連弾したこともありました。
残念ながら、カツァリスは最近会っておらず、訃報も知らなかったようです。

冥福をお祈りしつつ、音楽の友1987年6月号に掲載された2人の対談をどうぞ。
(なお、対談冒頭の2回目の来日の日時は間違っています。2回目は1986年ではなく初来日と同じ年の1985年10月です)

最新情報:これまでのインタビューの中で最長・最高のもの 焦元溥著「ピアニストが語る! 静寂の中に音楽があふれる」

少し前ですが、台湾の音楽ジャーナリスト、焦元溥(チャオ・ユアンプー)さんが書いた、著名ピアニストとの対談・インタビューの第4弾が発売され、そこにとうとうカツァリスのインタビューが掲載されています。もちろん、日本語訳は我らが盟友の音楽ジャーナリスト森岡葉さんです。

静寂の中に、音楽があふれる (現代の世界的ピアニストたちとの対話 第四巻)
焦 元溥 (著), 森岡 葉 (翻訳)  アルファベータブックス社

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
この中でカツァリスのインタビューはおよそ30ページ分収録されており、かなり長い分量は彼の幼少期から学生時代に割かれており、文句無く、これまでのインタビューの中で、最長で最高のものということができます。新しい事実やエピソードもいくつか、これではじめて知ったというものもあり、絶対に必読です。
ただ、実際にインタビューが行われたのは2013年なので最新情報というわけではありません。そのせいか、ベートーヴェン交響曲ピアノ編曲の流れから、「リストは第九をピアノ2台版に編曲していますが。これを録音することを考えてますか?」という問いに「私は2台ピアノの演奏は原則的にしないことにしています」などと、答えてしまっているのはご愛嬌。この本が今年の来日公演のデュオの日に会場でCDと一緒に売られていても、突っ込みなしでお願いします。
そして、なんといっても、作者のあとがきのタイトルが「変人ではない、才気あふれる超絶技巧の名手なのだ!」とあるにもかかわらず、空港であったツィメルマンへのカツァリスらしい奇行エピソードでオチをつけてくくれるあたり最高の締めとなっています。
さらに、カツァリス以外に収録されているピアニストは、カツァリスと因縁のアファナシェフ、仲のいいスティーブン・ハフ、カツァリスの次にベト交響曲を録音したシチェルバコフ、など何かと関係ある人ばかりで、特にアファナシェフはいろいろ大変な人生で、まあ優勝させてあげてよかったんじゃない?と少し許してあげる気持ちになりました(笑)。

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