今年三回あった来日公演もとうとう最終日、聖地浜離宮ホールでの前代未聞のひとり協奏曲ナイトです。
【プログラム】
即興演奏
リスト:ピアノ協奏曲第二番 カツァリス編曲
ショパン:ピアノ協奏曲第二番第二楽章 ショパンオリジナル
ショパン:ピアノ協奏曲第一番第二楽章 ショパンオリジナル
ベートーヴェンピアノ協奏曲第五番皇帝 カツァリス編曲
なぜカツァリスの公演で浜離宮を聖地というか。ここではカツァリスのキャリアの中でも屈指の名演が生まれることが多いからです。その原因は、ホールの大きさや音響がよいのももちろんですが、最大の理由はピアノだと思います。
カツァリスはいまや数少ない本物のヤマハ弾きなのは有名ですが、数年前から新型CFXというのを弾いています。地方でやる場合、どこからか運ぶようですが、この浜離宮でやる場合、銀座にある門外不出のヤマハ渾身のCFXが運び込まれます。これにカツァリスが全幅の信頼を置く曽我氏の調律で、ピアノはこれ以上ないコンディションに仕上がります。こうなると名演フラッグが立つというわけです。
そういうわけで迎えたこの日の公演、まさに、思う存分ベストの状態のピアノ鳴らしまくったカツァリスの鬼気迫る演奏が炸裂し、神公演となりました。カツァリス本人も、キャリアベストに近いできと興奮しまくってたようです。
即興演奏は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番をかなり多めに入れてきて、この日のひとり協奏曲ナイトの前座に相応しい内容。あまりに凝っていたので、これはもしかして編曲手がけているのでは? と。実現すれば、ひとり協奏曲の第四弾となりますが。。。
この即興演奏、他も含めてとにかく気合入りまくりで、いつものご機嫌伺い的な空気ではなく、この日の調子の良さがビンビン伝わってくるものでした。
この日のベストは実は次のリスト第二番です。この鬼門である難曲は実はショパンの後に弾く予定だったものを、即興演奏のノリのまま、一気に弾きたいということで曲順変更したのです。その勢いで、見事に本人納得の出来でした。この曲、原曲の再現性はないものの、カツァリスの超絶技巧、強音連打で、違う楽しみがあるのですが、本人がちょっと嫌がるくらい難曲で、ときには破綻寸前になることも。(まあ、本人の編曲なので、自分のさじ加減でどうにでもそればいいとおもうのですが、それを極限までやるのがカツァリス)
しかし、この日はまったく危なげなく立ち向かい、次々と難所をクリア。まさにやっつけてしまったという感じです。弾き終わったあと、サムライの感じだったと舞台上で本人が言ったには、冗談ではなく、ほんとに戦った気持ちでいたのです。
その後のショパンの協奏曲第二楽章の二曲の美しいこと。前のリストとは変わって、音の一粒一粒がキラキラしていながら、深く、心に沁みてくる感じ。ちなみに、カツァリスは、さきほどのリストのときのサムライ発言を受けて、「サムライを忘れて。。。」とつぶやき、自分に言い聞かせながら、ショパンを弾き始めました。
後半のベトも気合十分でもちろんすごかったのですが、ちょっと気合い、気持ち入りすぎだったか。全体のまとまりでいえば、宝塚公演の皇帝のほうが良かったかも。でもエモーション重視のカツァリスなら、今日の方が
満足しているでしょう。いや、すごかったんですけど。
アンコールは、おなじみ、チャイコフスキー十月カラスコのアディオス。
というわけで、宝塚、浜離宮と、とても脳梗塞、心筋梗塞で復帰を危ぶまれていた人とは思えない名演ぶりで
、復活どころか、よりパワーアップして、手が付けられないくらい元気なカツァリスを確認できました。
カツァリスの独自路線ぶりもほどがあるだろというくらいインフレになってしまって、次に何をやらかしてくれるのか興味はつきませんが、元気でまた来日して欲しいものです。
カツァリスの次回来日は、来年三月に浜松のピアノコンクールのオープニングコンサートとマスタークラス、審査員で予定されていますが、ツアーは2015年までない予定です。
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