カテゴリー: 日々是カツァリス2018

日々是カツァリス2018: 10月3日浜離宮朝日ホール公演

7月に続いて今年2回目の来日となった恒例の秋公演は7月と同じオールフレンチプログラム。
残念ながら、予定されていた9月30日の豊田公演は台風のために中止、払い戻しになったため、コンサートはこの浜離宮公演だけになってしまいました。
20181003hamarikyuS.jpg

まず前半は全体的な印象でいえば、横浜公演で最初に聞いたときと変わって、曲は地味だけどとにかく音色が明るくて多彩に聞こえてまったく退屈しなかったです。とくにフォーレからプーランク、ドビュッシーの流れでは音色の深さもあってかなり好印象に変わりました。

ただ、これはカツァリスのいつものプログラミングの特徴で、このような小品をならべるときの曲順が、理屈ではこだわりがあって考え抜かれているんだろうなーとは理解できるものの、演奏効果というところでは、せっかく高ぶってきたところで冷静に元へ戻されるような流れが多く、イマイチ盛り上がりに欠ける印象に終わってしまうのがいつも残念。

まあ、もういくら言っても仕方ないんだけど、ベルガマスク組曲でもピアノのためにでも丸々どちらかでも全曲やってくれるだけでプログラミングのまとまりがグッとでて、全然印象変わるんだけどなー(棒) あー。イヤですか、そですよねー(棒)

後半のカルメン組曲。普通に序曲やって、いやむしろやらないわけにいかないから一応やります的にサラサラやって、ところどころん好き勝手な編曲、演奏に。場末のシャンソン風ハバネラやって、間奏曲はふつうだけど、なぜか闘牛士の歌のあとに、フィナーレをファンファーレからの子供の合唱って、曲順おかしいけど、これは逆に演奏効果的にはかなりよいのでほんとにカツァリスの考えてることはよくわかりませんなw 
でもこのカルメンの最後の、ファンファーレ音の華麗さと、その後のピッコロ、フルートのかけあいのところから子供の合唱の高音部の音色の弾き分けは本当に見事で、宝石のような音の洪水が圧巻。特に高音ppの美しさといったら、かの有名な「ショパンを弾くレッスン編」の子犬のワルツフィナーレ部分で生徒の小学生さっちゃんに「空から真珠が降ってくるように」といいながらノンペダルで弾くように要求した無茶ブリを思い出しましたよ。

では、脱線しますが、その場面、全員で「無理無理無理」という突っ込み弾幕をご覧ください。

いや、無理でしょ、そりゃ。このころのカツァリスって本当にキレッキレ・・・。プードルからブルドックへの歴史も感じる・・・。

で、まあ謝肉祭はガルバン編曲をベースに案の定、音追加したり、いじりまくって完全に後半はいつものカツァリスワールド。でも編曲のベースは同じだし、なにより謝肉祭っていう曲がそういうカオスな曲調がまじっても全体の印象がぼやけない組曲仕立てだから前半のようなボンヤリ印象にはならないんですなー。この謝肉祭、カツァリスの近年の新しいレパートリーの中では久々のヒット作だと思います。

さて、いつもならアンコールは即興演奏ということろですが、今回はちょっと趣向が違いました。
「ミナサン、コンバンワ、スイマセン、ニホンゴワカリマセン」といういつものつかみからはじまり語りだしたところでは、

(フランス語と英語で交互に)
・今夜はフランス大使ローラン・ピックさんに来ていただいています (ワー、パチパチ)
・ここで美しい物語を語ります (ん?)
・私が50年前にパリ音楽院で勉強していたころ、すばらしい若いピアニストがいました。
・覚えているのは彼女がフランツ・リストの美しい曲「ため息」ですばらしい演奏をしたことです。
・彼女の演奏はドビュッシーのプレリュードをYou Tubeで見ることが出来ます。
・彼女はマダカスカル共和国出身で名前は、ミレイユ・ラクトゥマララといいます。
・それから私は彼女の名前を50年間まったくききませんでした(ほー)
・彼女は実はその後政治家の道を歩み、いま実はここ東京にいて駐日マダガスカル大使なのです(おー??)
・私たちはこの東京で50年ぶりに再会しました。
・どうぞ舞台へ(おおおお、パチパチ)
・今夜はドヴォルザークのスラブ舞曲4手を演奏したいと思います (ワーーーパチパチパチ)

その後、大使から通訳を介して、あいさつとカツァリスへの謝意があり、演奏へ。
通訳の女の子にもっと大きい声でと促すカツァリスに笑いwww

という、なんとも心温まるエピソードと飛び入りゲストアンコールでした。
ちなみにカツァリスがいってた大使が弾くドビュッシーのプレリュードはこちら。

飛び入りゲストは、いつかの宮澤明子さん以来となりましたw

さて、今回とくにフレンチプロにピッタリだったカツァリスの音色についての裏話を。

今回のピアノはかなりこのプログラムを意識して調整されているようで、お気に入りヤマハCFXをハンマーを変えたりして仕上げたんだとか。とにかく鍵盤が軽くて軽くて、パラパラ音がなるものだったそうです。この日使ったピアノは実はマスタークラスでも使ったようで、そのときに生徒さんがこのピアノを弾くと音割れしてとても弾けなかったそうですが、カツァリスが弾くとまったく音割れしないという神業ぶり。そんな代物を駆使しての今回のプログラム、結果的には大成功だったのではないでしょうか。確かに、今回のピアノでシューベルトとかシューマンとかはちょっとミスマッチだと思いますなー。

最後に、ここ2枚の新譜、ブラームスハンガリー舞曲の連弾と、テノール歌手との共演盤がPIANO21から出なかった件は、あくまでスポットでワーナーからオファーがあったり、歌手側のレコード会社から出したりで、PIANO21は無事だそうですwww

さて、次は来年2月に関西3公演と日経ホールでまたフレンチプロです。今回聞けなかった方はぜひどうぞ。
また12月にはソロ公演、加えて、また広瀬悦子さんとの共演で今回は第九も予定されているようです。
続きを読む

日々是カツァリス2018: 7月17日横浜みなとみらい公演

 さて、はじまりました、2018年のカツァリス来日公演。

 なんと今年から来年にかけ、7月、9-10月、2月と3回も来日し、ちょこちょことコンサートをやってくれます。
 しかも、同じフレンチプログラムで(笑) (全国日程はこちら)

 このフレンチプログラムは、前々から、本人もやりたいやりたいといってたものなんですが、メインを謝肉祭にしてくるとは思わなかったので意外でした。ただし、前半のドビュッシー、ラヴェルは想定どおりでしたが・・・。

 フレンチプロといえば、NHKFMでもサントリーホール公演が放送され、名古屋公演は一部CDにも収録されている1988年の来日公演が記憶に残ってます。しかし、昔からのファンはよく知ってると思いますが、カツァリスは国籍はフランスですが、フランス人としてのアイデンティーはほぼなく、ほとんどギリシャ人(しかもキプロス系)なわけで、フランス物を得意なレパートリーにしていたという時代はありません。この1988年の公演が本格的にはじめて取り組んだフランス物だったと記憶しています。余談ですが、デビュー当時から、シューベルト、ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、モーツァルトと独墺系ばかり弾いていた人なので、フランス人=フランス作曲家弾きみたいなイメージで語られがちだった昔はかなり変人扱いされていました。(まあ変人扱いの理由はそれだけではありませんでしたが・・・笑)

 では今回のプログラムです。
20180717yokohamaS.jpg

ちょっと今回は1988年プロとは趣が違います。バロックから始まるのだけ同じ。

まずバロック時代から、フォルクレとリュリ。フォルクレは今回が初めて弾くはず、リュリはおなじみガヴォットではなく編曲物とパヴァーヌ。そこから、パヴァーヌ縛りでラヴェル、フォーレと続いて、次はシシリエンヌ縛り(笑)でフォーレ、プーランク、そして月の光縛りでフォーレからドビュッシーと、なんとも統一感あるようなないような、テーマ性あるようなないような(笑)。

これはよくカツァリスがやるプログラミングなんですが、同じテーマとか曲名で違う作曲家をならべるという・・・きっとカツァリスとしては「どうだ、考えてるぜ~ヘッヘッヘ」感いっぱいなんだと思いますが、実際聞いてるほうとしてはふーん、くらいという・・・(笑)

まあ、前半の感想としては、「まあいいんじゃない?」でしょうか。。。
細かく聞くと、バロックものでのチェンバロ風の響きとかやっぱカツァリスらしくていいなと思うところもあるのだけど、とにかく地味で長い・・・。もし、これからの公演に予定があって、前半間に合わないので行こうか迷ってる人がいたら、

「前半聞かなくてOKっす、後半勝負で!」といえますな。

その他、ボニスは以前、室内楽でやってたりしたけど、ソロは初、ドビュッシーは月の光以外初めてだったりとか、ですかね。

 で、後半、なぜかカルメンの前に知らないエクスターズって曲から始めたりして、相変わらずよく分からんわ(笑)
カルメンはカツァリス編曲。PIANO21のCD「111ピアノヒッツ」に収録されていたハバネラは、カツァリス編曲ではなかったので、それも含めてこれは初公開。編曲自体は、カルメン、闘牛牛の歌で、パラフレーズとは言わないまでも、単純な編曲ではない味付けをしてて面白かったですな。

 メインは謝肉祭。意外にも、このまま小品プロで終わらせるかと思いきや、ガッツリしたものを最後にもってきてようやくプログラムとしては収まりがいいものに。事前に編曲者は発表されていなかったので、まさかのカツァリス本人編曲か?と思ったら、ガルバン編曲で一安心?  以前の1988年プロで弾いた白鳥は有名なゴドフスキー編曲だったので、これも含めて初披露。こういう曲ってカツァリスに合うと思うんだが、何回か日本で弾いていくうちにもっと良くなるだろうし、これは次回も期待!

今回は即興演奏は冒頭でなく、アンコールで。やはり、フランスと恒例の日本のメロディーでチョイチョイと。

まあ、前半はちょっと退屈だけど、後半は面白いのでトータルでは満足度高し。
10月の聖地・浜離宮公演に期待ですな。

で、いま気づいたんですけど、これって、ドビュッシー没後100年記念公演??? ドビュッシーNo印象!

 
続きを読む

アーカイブ