怒涛の来日公演おっかけが終了し、その後、キーシンやペライアを聴いて、頭の中がいっぱいいっぱいだったため、落ち着いてからいろいろ思い出してみました。
N響ののモーツァルトコンチェルトNo.21
いきなり来日公演初日が久しぶりのN響との共演。おまけにFMでの生中継やらTV収録やらでかなりの大舞台。やっぱりこういう場に出ると注目度は違うもので、ツイート数とかハンパなかったです。
初日の東京はすでにTV放送もされたので見た人も多かったと思いますが、かなりぶっ飛んでいて、もう少し落ち着いて弾けばよかったのにと思ってましたが、初日&いろーんな理由によりテンションあがりまくりだったのでしょう。。。むしろ久しぶりにカツァリスを見た人には「相変わらずカツァリスってぶっ飛んでるなあ」と思ってもらえたのは期待通り?
カツァリスはモーツァルトのコンチェルトをかなり頻繁には弾きますが、この21番は名曲ですがほとんど弾きません。楽譜を見て弾いているのを驚いた人もいるようで、TV解説に人などは妙に深読みしていましたが、単純な理由です。そんなに弾いてないのです。単に「覚えていない」だけですな。。。
放送を聴いていた自分は、カデンツァは何を弾くのかとドキドキしていたら、案の定カツァリスオリジナルでした。でも、会場の解説とかパンフレットには書いてあったようです。CDに収録されているバージョンでいうと、カデンツァAパターンってやつです。 このモツコンNo.21はPIANO21からすでにリリースされています。こちら。
アンコールは、おなじみ即興演奏! これはあまりカツァリスを知らない人にとっては度胆抜かれたみたいで、してやったりです。これが彼の魅力なので。でもテーマは「オッフェンバックの舟歌」に「さくらさくら」のみとかなり短縮バージョン。
翌日の大阪はかなり落ち着いた演奏でこちらのほうがよかったです。アンコールはシューベルトリストのセレナーデでした。
リストピアノ協奏曲第2番(ソロバージョン、カツァリス編曲)
なんといっても今回の来日公演の目玉は、この曲でした。昨年のショパンピアノ協奏曲第2番のソロバージョンに続き、「楽団ひとり」第2弾としてのメインプロは実は実現するかどうかが、危うくハラハラドキドキ。
とにかく新しいプログラムとしてもってくるには準備期間があまりなかったようだし、日本公演のためだけの新レパートリーだし、そのプレッシャーは相当なものだったようで。。。そのせいか、世界初演となった軽井沢公演では、肩に力が入っててとにかく無事弾き通してくれたことだけで十分って感じでした。
とにかくこの曲、難しいです。カツァリス本人がノイローゼになりそうになるくらいで本人もクレイジーだといったとか。いや、あんた、自分で編曲したんでしょ? というツッコミはなしで、そのチャレンジ精神に拍手。この大曲は、コンサートレパートリーとしては、20年以上も前に弾いていたカツァリスの出世作リスト編の英雄以来の「ものごっつい曲」でした。
その後、松江、宇都宮、浜離宮、神戸と、都合5回無事に弾いてくれて、その都度完成度もアップ。とくに最終日神戸公演の演奏が出色で、まさに鬼気迫るヴィルトーゾカツァリスの神髄をみせてくれた神演奏でした。
おそらくもう2度と弾かないのでは、と思ってましたが、結構弾きなれてきたみたいなので、定番レパートリーになるかも?
シマノフスキー弦楽四重奏団との共演
ここ数年、来日のたびに、室内楽もやるカツァリスですが、今回もありました。京都ではN響メンバーとチャリティーコンサートで共演したりしましたが、浜離宮でやったシマノフスキー弦楽四重奏団との共演がなかなか良かったです。
意外といっては失礼なのですが、このシマちゃんが上手い。もう共演者としては十分すぎるほど(あくまでカツァリス主体で見ますから笑) 練習したがらないカツァリスとおそらくほとんどぶっつけ本番に近いレベルでここまでやってくれれば御の字でございます。カツァリスもおかげでノリノリ。ショパン協奏曲第2番第2楽章の美しさは絶品。
アンコールのシマノフスキーのタランテラの演奏はキッレキレで、カツァリスのアンコールはなかったけど、十分満足な公演でした。シマちゃん、また来いよー。
京都の一連のチャリティー公演
清水寺で2回、二条城、京都コンサートホールで1回づつ、と合計4回行われた、震災復興チャリティー公演にカツァリスがメインゲスト扱いで出演。プログラムがいろいろかわったりしたけど、それなりに楽しめました。
とくに清水寺で公演は、10,000円と高かったけど、お寺の本堂に座布団弾いてカツァリスを間近に見ながら、夜の京の山々にこだまする響きを堪能。ライトアップされた夜景も素晴らしく最高に良かったです。
演奏は、清水寺、二条城は野外だったので、なんともいえないけど、満員だったし成功なんでしょう。おそらく行政関係がからんだ大きなチャリティーイベントだったのでスポンサー企業からの招待客がほとんどだったみたいだけど、それはそれで。
カツァリスも来日早々、N響の東京から大阪、軽井沢、京都とすべて日帰り移動して疲れていたようでいい休養になったでしょう。
即興演奏
毎度おなじみになりました即興演奏ですが、今年もいろいろ新しいテーマが入ってました。
N響公演のアンコールでは、オッフェンバック舟歌はおなじみでしたが、さくらさくらをたっぷりとやり、今回はこの後の公演の即興演奏ではすべてさくらさくらが最後のテーマになってました。
そのほかの公演の即興で使ったテーマは、悲愴、白鳥の湖、カルメンなどはおなじみ。前回も多用した、例の超絶同音連打のアルハンブラは今回も後半の公演で入ってましたが、「いつもより多く叩いてますー」状態でした。
新しく使われたテーマが、まず、メリーウィドウ! これはなかなか良かった。カツァリスは歌物はやっぱり得意なのでオペラパラフレーズ集なっか録音してほしいな。それから、これも新しいのは、アランフェス! アランフェスからアルハンブラへのギター曲流れは面白かったですな。
あと荒城の月、とかワルソーコンチェルトもあったような記憶があるが、ちょっと自信なし。即興演奏自体は浜離宮と神戸が一番長かったかな。神戸はラフマニノフのコンチェルト2番のテーマもあったし。
その他
その他にもいろいろ弾きましたが、まあ、前座の域をでなかったというか。。。とくに軽井沢でのショパンは・・・。
あ、でも、リストプロのプログラムが変更になって、孤独とかが入った前半のプログラムは、変更してよかったと思いましたね。あのほうがまとまりがある。あと、細かいことですが、リストのハンガリー狂詩曲はプログラムでは第3・5・7番の順でしたが、実際の演奏順は、3・7・5番でした。。。
神公演は?
飛びぬけて演奏がよい公演を「神公演」と認定しています。だいたい毎年のパターンでいえば、ピアノのコンディション、ホールの音響のアドバンテージがある浜離宮公演なのですが、今年は文句なく神戸公演でしたね。ピアノもよく、カツァリスのコンディションも復活して、鬼気迫る演奏でした。
来年の来日公演は?
ここのとこ毎年来日しているカツァリスですが、来年はもう半年後の4月に来日予定です。そしてなんと予定されているメインプログラムが、ベートーヴェンピアノ協奏曲第5番「皇帝」のソロバージョン(カツァリス編曲)というもの。。。
いや、もうなんでもありっすか?(笑)
以前にカツァリスがコンチェルトを弾きたがらないことについて本人と話しているときに、「じゃあ、一人でソロバージョンを弾けば?」というと、「それは考えてるんだ」といったものの、あの曲はいいトランスクリプションがないとか言い出したりしてました。要は、とにかく全部自分で弾きたい、全部自分でコントロールしたいという欲求が強いのですが、ネックは編曲だと・・・。
で、昨年やったショパンピアノ協奏曲第2番のソロバージョンはショパンのオリジナル、今年は、リスト第2番を自分で編曲、来年の第3弾の皇帝も自分の編曲・・・。とうとう自分で編曲・・・。いや、それができるならもうなんでも出来るでしょ!?
もともと編曲というのは、全部を音にするのは不可能なわけで。なら、どの音を残し、どの音を削るかというのが重要で、それをうまく取捨選択するのがいい編曲者で、リストなんかはそれがうまいですな。曲のプロポーションを損なわず、むずかしくすることが目的でなく、いかにオリジナルの良さを1台のピアノにおきかえるか、そこがトランスクリプションの魅力。
ところがカツァリス、それでは納得いかない御仁。どんなものでも弾けるだけに、あれもこれもと音を足していき、出来上がりが 普通では演奏不可能な超絶技巧曲になるんですな・・・。それを平然と弾きこなし、聴衆を唖然とさせるのもエンタテイメントとしては立派な要素だが、いかんせん、あと半年で準備できるのだろうかと本当に心配・・・。
しかし、この「楽団ひとり」パターンがOKなら、もうチャイコだとか、ラフマニノフだとかも、ソロバージョンでお願いしたいもんです。
そんなわけで、今年も無事に終わりました。また半年後に! 2012年4月の日程はまもなく発表されます。
そのあと2013年は来日しませんので、次回も必聴!
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