カテゴリー: 来日公演情報

日々是カツァリス2023:12月2日東京(葛飾)公演

浜離宮に続いて東京公演2日目はここのところ続いている葛飾での公演。おもえば、コロナ期間中の2020年にここでオールショパンプログラムが予定されていて延期、さらに延期分の2021年も結局中止となったことがありました。あのまま、オールショパンを久しぶりにやっていたら、どうだっただろう・・・と思わなくもないですな。

2つ目のプログラムは前半のみ変更。
シューベルト:即興曲第1番ヘ短調 D.935,Op.142-1
シューベルト:即興曲第3番変ロ長調 D.935 Op.142-3
シューベルト (リスト編曲):アヴェ・マリア
シューマン:子供の情景
ラフマニノフ:幻想的小品集 Op.3
カツァリス:ラフマニノフの有名な旋律を主題にした即興演奏(主に協奏曲など)
カツァリス:さようならラフマニノフ
アンコール1 ショパン:幻想即興曲
アンコール2 バッハ(カツァリス・シロティ編):ラルゴ(協奏曲BWV1056から)

前半のシューベルト即興曲が899から935に変更で、念願の935ー1が聴けましたよ。なんかペダルをあまり使わず、脳内シミュレーションしてたものと違ったけど、満足。
シューベルトリストはセレナーデではなくアヴェマリア。もう何回聴いたか分からないけど毎回ちょっとづつ違う感じがするのがおもしろい。
浜離宮ではハンガリー幻想曲のソロ版という超ド級サプライズがあったが、葛飾ではその代わりに子供の情景。ちょっとプログラム的に釣り合わないやんと思ったけど、いい意味で枯れた巨匠チックな子供の情景だったな。随分久しぶりだと思ったけど、2019年の日経ホール以来だからそうでもなかったです。
後半は浜離宮と同じプログラム。幻想的小品集はこれからも弾くかどうかわからないけど、いいレパートリーになったね。レコーディングしてるんだろうか。
ピアノ協奏曲メインのメドレーは浜離宮のときとメインパートは変わってなかったけど繋ぎ曲、繋ぎ方が変わっていたので、やっぱりこれは即興といってもいいかもしれないw やはりこの演奏が一番盛り上がるので、本プロ最後はこれにしたほうがいいと思いますw
アンコールは、1曲目は浜離宮と同じショパン幻想即興曲、2曲目はお馴染みバッハのラルゴ、シロティ編ではなくてカツァリス編だったかも。

そんなわけで、正直ホールの音響は浜離宮に敵わないけど、集中力高い演奏で今日もまあまあ満足でした。
自分は今年はこれで打ち止め、大阪、福岡は行きませんが、来日中のエピソードなどあったらまとめてまたアップします。

日々是カツァリス2023:11月30日浜離宮朝日ホール

23日に来日して、25-26日に非公開レッスン、28日に非公開ゲネプロと、ほぼ一週間日本に滞在してからの初日となった浜離宮公演、やはり神公演となりました。

シューベルト:即興曲第1番ハ長調 D.899,Op.90-1
シューベルト:即興曲第3番変ト長調 D.899 Op.90-3
シューベルト (リスト編曲):セレナーデ
シューベルト:楽興の時第3番 D.780, Op.94-3
リスト:ハンガリー幻想曲S.123(編曲:ハンスフォンビューロー/カツァリス)
ラフマニノフ:幻想的小品集 Op.3
カツァリス:ラフマニノフの有名な旋律を主題にした即興演奏(主に協奏曲など)
カツァリス:さようならラフマニノフ
アンコール1 ショパン:幻想即興曲
アンコール2 カツァリス:シャンソンのテーマで即興演奏

なかなか全曲発表されなかったプログラムでしたが、まあまあまとまりあるものでした。
前半はシューベルト&リスト、後半がラフマニノフで一応事前謳い文句に偽りなしでw
で、まずはシューベルト即興曲D899-1/3。もう一つのプロではD935-1/3で、いずれもキャリア初演奏。
(935の第2番だけは2017年の来日公演でも弾いたので、全曲初ではない)
以前からどうにか899は弾いてほしかったので感無量ですが、やはり初めて弾くだけあって手探り感はあれど、899-3で美音堪能させていただきました。もっと弾きこんでくれたらもっと素晴らしくなりそう。
そのあとのセレナーデはもう堂に入ったもの。
有名な楽興の時3番、これも確かかなり久しぶりで、CDではPIANOヒッツ101に収録されています。
そして、前半の堂々たるメイン曲は、なんと協奏曲レパートリーの十八番であるリストのハンガリー幻想曲のソロ版! え、いったいいつこんなの仕込んでたの? とびっくりだったが、ハンスフォンビューローの編曲をベースにカツァリスが手を入れた形のようで、なんども聴いた曲のソロパートが蘇りつつ、オケパートを好き勝手弾きまくってるに、曲の構成として、同じひとり協奏曲レパートリーのピアノ協奏曲第2番よりも無理がなくてかなりいい感じ。
いよいよ協奏曲のソロバージョンも増えてきたので、そのうちそればかりの「楽団ひとり」の夕べとかやりそう。
後半はなんといってもラフマニノフの即興メドレー?と予告されていたパート。いまいちどういう風にやるのか???だったけど、いきなり協奏曲第1番からはじまったので、これは以前から予告していた「協奏曲のメロディーのメドレー」だなと確信。実際そうなったけど、結構おさまりもよく、ひぱってくるところがやっぱりそこだよねと納得でこれはこれで大満足。即興とは言ってるけど、絶対これはレコーディングしているに違いないと思うw
ただ、本プロ最後に自作をもってきてたけど、盛り上がりから言えば順番を逆にしたほうがよいのにとは思います。
アンコールで幻想即興曲って意外に久しぶり? たぶん2016年以来かな。アンコ2曲目は以前もやって、CDにもなったフレンチソング、シャンソンの即興。これはそのときどきでつなぎ方が変わったりするので、本当の即興演奏っぽい。
簡単なまとめは以上で、じっくり振り返るのはまた後日。
ただ、いいたいことは以下のことがすべて。

神ホール(浜離宮)+神ピアノ(ヤマハCFX)+神調律師(曽我氏)=まだまだ世界レベルの神演奏

 

日々是カツァリス2022:4月23日兵庫県立芸術文化センター公演

今回、東京と兵庫とわずか2回の来日公演の最後となった兵庫公演ですが、私の前の席に座っていた典型的な関西マダム(つまりオバチャン)がオルガンシンフォニーが終わったあとに隣の人に大きな声で話した一言が今回のツアーの感想に尽きます。

「こら人間ワザやないわなー、アカンでこれは」

関西のオバチャン恐るべし。見事にカツァリスの本質を突いた一言です。特に最後の「アカン」はいわゆる若者用語でいう「ヤバイ」の意味ではなく、「兄ちゃん、その年でなんでこんなムチャなことしてんねや、アカンで」という意味の「アカン」に違いありません。

今回のプログラム、我々は麻痺してしまっていますが、考えてみれば変です。前半のベートーヴェンは葬送行進曲はともかく、スプリングソナタとクロイツェルソナタのピアノトランスクリプション。後半はサンサーンスのトランスクリプション。混じりっけなしのオール編曲ものプロ。かつてのカツァリス本人ですらプログラムはオーソドックスなものとマニアックなものを混ぜるのがポリシーと言っていたにもかかわらず。。。ひとりデュオ、ひとりコンチェルト、ひとりシンフォニーともはやこの辺りでは驚かなくなっていますが、チャキチャキの若手がやるならともかく、70歳超えたお爺さんですよ。。。
70歳こえて知名度あるピアニストなら、まあ、ヨボヨボ歩いてきて、テンポゆったりとシューベルトとかモーツァルトくらいをもったいぶって弾けばそれで十分「大家扱い」してもらえるわけです。それどころか、毎回編曲ものを含む新レパートリーもってきて、目を輝かせながら、あれ弾く、今度これ弾く、やれチャイコの交響曲4-6番も編曲したい、録音したい、時間が足りないと、まったく変わりません。かっつぁんがかつてのホルショフスキーやチッコリーニのようになれる姿が想像できません。

こうなれば我々も腹を括るしかありません。いつまでもムチャにつき合います。心配ですが、仕方ありません。前出のオバチャンなら「いつまでも若いおもたらアカンで、いつまでもムチャしたらアカンで」となるでしょうが、本人がご機嫌でしかも今回のように十分弾けるところをまだ見せてくれるのですから。

簡単に、兵庫公演だけを振り返ると、演奏自体は東京公演のほうが気合入っててガッチリしてたと思いますが、ホールが響かず、特にオルガンシンフォニーの響きを堪能できなかったのが、兵庫では十分ホールに響き渡ったので、その点で兵庫のほうがよかったです。マジでオルガンシンフォニーの第2部のグワン、グワンって弾くところ、オルガンの音がしました! (CDだともっと本当にオルガンに聴こえるけど) 
たぶんもう弾かないでしょうが、あと何回かいいホールで聴いてみたかったですな。
アンコールは4曲で、葛飾と同じでしたが、ラフマニノフの部分がピアノ協奏曲第2番だけでなく、パガニーニラプソディも入っていました。
アンコール
1.コンスタンティニディス「ギリシャの島々の8つの舞曲」から第1曲「シルトス」
2.ボルトキエヴィチ「6つのピアノ組曲 Op.48」から第2番「3/4拍子」、ラフマニノフパガニーニラプソディとピアノ協奏曲第2番の即興曲
3.ショパンワルツOp64-2
4.さくらさくらの主題による即興曲
ラフマニノフ終わりでは禁止されているはずのブラボーが飛び出し、スタンディングオベーション発生。なかなか感動的でした。

その他、終演後に少し話した内容
・ 次回来日公演は未定。でもたぶん来年もあると思う。
・ でも何弾くかまったく未定だしー。(オールショパン?)
・ ネヴィルマリナーと録音したハイドンの協奏曲がまだリリースされていない!(プンスカ)
・ 新しいヤマハのCFXやっぱええでー
・ 私)来日回数34回じゃなくて37回やでー カ)えー、オマエが前教えてたやんか! 私)ちがうちがう! カ)えー、37回やな、わかったわ

ということで、今年のおっかけも終了。来年あるかどうかわかりませんが、皆様お元気で。

日々是カツァリス2022:4月15日東京公演(葛飾)

なんだかんだで2019年12月以来の来日となり、たった2回の公演で東京は平日の葛飾というなかなかハードな初日ですが、とにかく無事に来日となってメデタシメデタシ。
今回のプログラムは前回の予定曲だったベートーヴェンから葬送ソナタの第3楽章と延期公演には予定になかったスプリングソナタ、クロイツェルソナタの編曲ものそれぞれ第1楽章。後半は、サンサーンスで2018,19年にも披露したガルバン編の動物の謝肉祭と交響曲第3番オルガン付きの後半部分というもの。

いつものように、オープニングの即興演奏は公演プログラムには書かれていないものの、バッハでやると事前アナウンスがあった通り、バッハで10分少し。今回はいつものフレーズをパラパラ適当に弾く即興と違って、3曲くらいをがっつり繋いで弾く感じで、このほうがこの後のコンサートの雰囲気を壊さず良かったです。ちなみに自分は冒頭の即興演奏はできればないほうが良い派です。(アンコールにやるなら良いと思う)

前半の葬送ソナタは第3楽章だけですが、かなり久しぶり。たぶん1980年後半以来弾いていないはず。パンフによればコロナと戦争の犠牲者の追悼で1曲目とのこと。拍手を制して次へ。
2-3曲目はCD「ベートーヴェンクロノロジカルオデッセイ」でも出色の出来だった有名ヴァイオリンソナタの「春」「クロイツェル」のトランスクリプションそれぞれ第1楽章のみ。前回2019年のときに「スプリングソナタがいいので弾いて」とお願いしたら「クロイツェルは?」と言われたのですが、両方弾いてくれたことに。でも実際、CDで聴くよりも実演だとクロイツェルのほうが良かったかな。
という前半でしたが、ちょっと座った席のせいか、ホールのデッドな響きのせいか、ピアノの音が響いてこず、カツァリス自身の調子は良さそうなのにちょっとだけ不満な前半でした。

後半のガルバン編の動物の謝肉祭では少し響きが豊かに聞こえはじめ、特に高音低音ではようやくかっつぁんらしく聞こえはじめて安心。謝肉祭は明らかに2019年よりも仕上がり度合いが増していて良かったです。あのハリーポッターのところはもっといいホールだったらもっと美しい音で聞こえただろうに・・・。
そして本日のメイン、オルガン交響曲の楽団ひとりバージョン。CDが昨年末に発売されて聞いた時にも驚愕してホンマにこれ弾くんかな?と思いましたが、見事やってくれました。一時期ちょっと衰え始めてパワー不足が目立ってきたパフォーマンスがかなり復活! とても70歳(来月71歳)とはおもえない気合で無事にこの大曲をコンサート初披露しました!

アンコールは1曲目で「最新のCDから」という本人の宣伝アナウンスwwの後、コンスタンティニディス「ギリシャの島々の8つの舞曲」から第1曲「シルトス」。2曲目は「音楽のボイコットに反対する」と宣言して、「ウクライナとロシアの2人のセルゲイの曲」として、ボルトキエヴィチの「6つのピアノ組曲 Op.48」から第2番「3/4拍子」とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の主要メロディーを。ラフマニノフの後はちょっとかっつぁん、ウルウルしてた。。。

いつもならこの辺で終わるところなのに、久しぶりの来日でサービス。ショパンのお得意のワルツOp.64-2。いつもより裏メロ強調しておきましたバージョンwww。そして最後はさくらさくらのテーマによる即興演奏で、ちょっと短いバージョンのやつ(2011年のN響コンサートのアンコールのやつ)。

というホールの響きを除けば大満足だったのですが、あの荘厳なオルガンシンフォニーをしっかりとしたホールで聴きたいとの思いが強くなり、予定していなかった兵庫公演も参戦することを決意。。。オルガンシンフォニーは本当に71歳が魂削って弾いているような鬼気迫る感じがするので絶対に今回聞き逃すと後悔します。何度でも言います。

「推しは推せるときに推せ」

もう71歳、あと何回日本に来てどれくらいのパフォーマンスができるか分からない。まして、心筋梗塞も脳梗塞もやってその都度奇跡の復活を遂げている人なだけに。ピアニストが老いるパターンはいくつかありますが、かっつぁんは老いても老いたなりのプログラミングや弾き方をするような人ではないので、本当にもうこんな曲をこんなに全開で弾くことはいつまでできるのだろう・・・。

あと、終わってから少し話せたのですが、
・(オイラ)いいプログラムやったでー → (かっつぁん)オルガンシンフォニーは前半の簡単なとこだけ弾きたかったのにー (それじゃ意味ないって!!! いや大変なのは分かるけどw)
・(オイラ)ベートーヴェンの協奏曲第4番弾いたってマジ? → (かっつぁん)キプロスのオケと初めてやったわー。ギリシャの指揮者でウンタラカンタラ(よくわからなかった)
・(かっつぁん)チャイコの交響曲第4、5,6番のトランスクリプションの録音したいけど、忙しくて手がつけられないわー(マジで早く!)
てな感じで、元気で嬉しそうでした。
 
それから、最近ベヒシュタインばかり弾いているかっつぁんですが、今回やはり日本ではヤマハ。しかもCFXの新モデルをこの日も兵庫も弾くということで、スーパー神調律師の曽我さんも帯同。万全の体制です。
兵庫はまだまだチケットがあるみたいですので、是非是非是非。

2020年カツァリス来日公演情報:7月12日(日)かつしかシンフォニーヒルズ

7月のオリンピック直前となりますが、葛飾でソロ公演が決まりました。

7月12日(日)14:00開演 かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
一般 ¥5,500

なんとオールショパンプログラムと発表されてますが、昨年の鹿児島・大阪公演に続き、関東で初となるスケルツォ2番、英雄ポロネーズは弾くのでしょうか?
オールショパンといいながら、オールショパン(弟子含む)プロにいつの間にか変更されないことを望みます。。。

チケットは招聘元レガーレでのみメールで先行予約あります。(2月11日00:00〜2月17日23:59まで)

有)LEGARE : cdt.legare@jcom.home.ne.jp

 

2020年来日公演情報:7月15日(水)日経ホール

7月15日にまた日経ホール、プログラムは同じオールベートーヴェンプロです!
イープラスでのチケットはもう先行発売開始!

第498回日経ミューズサロン
シプリアン・カツァリス ピアノ・リサイタル
~鍵盤の魔術師カツァリスが生誕250周年を記念してベートーヴェンを弾く~

2020年7月15日(水) 午後6時30分開演
日経ホール

イープラス先行予約はこちら

日々是カツァリス2019:12月13日 茅ヶ崎公演 何年ぶりかの神公演!

まさか、まさか、平日の茅ヶ崎公演で、こんな神公演に遭遇するとは夢にも思わなかったです。
そして、カツァリスさん、最近ちょっと悪口書き気味で申し訳ありませんでした。いや、本当にこの日は素晴らしかった。何年ぶりだろうか、素直に感動できたのは・・・。
まして、先月の頭には、あの忌まわしき「上海の悪夢」を経験している身としては、正直もうそんなに期待もしていなかったです・・・。

この日は最初の即興演奏からすでに違いましたな。音がとにかく素晴らしく、いつもより集中力がある感じ。そのままベト本プロに入っても変わらず、楽譜を見ながらの演奏も気になることなく音楽に没頭させてくれます。テンペストの弱音の美しさといったら・・・。茅ヶ崎のホールも改装されたらしく、以前より響きがストレートに客席に伝わってくる感じ。
前半終了で早くも神公演の予感。


そして後半のヴァイオリン協奏曲の3楽章が素晴らしい。これは今週発売された6枚組CDでも真っ先に聞いて「これはイイ!」と思った、その期待通りの演奏。CDでは「春」「クロイツェル」も良かったし、カツァリスに弾くヴァイオリン曲のトランスクリプションにハズレなしかも。実は、同じ話が出ていたらしく、終演後本人に話すと、コンサートで弾くのもまんざらではなさそう!
そして交響曲7番2楽章と9番3楽章という、ちょっとオネムになりそうな曲も、この日の集中力極まった演奏でまったく眠くならず、ベト交の世界に引きずり込んでくれました。
最後は、この日当初予定されていた謝肉祭を直前で変更し、ショパンの英雄ポロネーズ、そしてラフマニノフメドレーと圧巻。英雄ポロネーズは鹿児島で弾いたときよりも、もちろん上海で弾いたときよりももう完全に手の内に入っている感じで、全盛期を彷彿とさせる演奏。最後のラフマニノフを本人はアンコールのつもりで弾いたが、本プロとしてプログラムには載っていたのはご愛嬌。
本当に感覚としては5-6年ぶり、ひとり皇帝やったとき以来?、プログラム全体の完成度からいえば、2000年代初頭以来10数年ぶりの感動を味わいました。

さて、なぜ、正直もうだめだなと思わせながらも、神公演で復活したのかと考えましたが・・・

1.疲れが取れた
やっぱり、今年は忙しすぎたかも。年初はずっとフレンチプロ。そのときから、モニューシュコの依頼が入って、レコーディングと演奏会。夏以降は平行して、ショパンの弟子プロをやりつつ、日本公演用にバラ1、スケ2、英プロなど準備し、さらにベートーヴェン6枚組CDのレコーディング。秋は中国でベヒシュタインツアーに引っ張りまわされ、そして日本公演では、デュオで第九。この第九が終わってかなり楽になったのでは?

2.ピアノ
カツァリスが日本で弾くのはかならずYAMAHAのCF-Xですが、今回は調律もカツァリスお気に入りの曽我さんらしく、文句の無い状態に。曽我さんNYから帰ってきてくれてありがとう! これからもよろしくお願いします。

3.CDとコンサートのタイミング
個人的やっぱりこれじゃないかと思うのは、今回のメインプロであるベートーヴェンを集中的にレコーディングしてかなり練りに練った段階でコンサートで披露できたということが大きいのでは。思うに、ここ数年、1年に複数回来日するものの、そのときのプログラムはなんだか思いつきのプログラムが並んでて、以前のようにPIANO21にレコーディングした新譜の曲を中心にして組んだプログラムというのはありませんでした。さらにCDにある曲目でもPIANO21はかなり以前に録音したものが突然発売されることもあり、熟成度が薄れてしまってコンサートで披露ということもあったのかと。今回はそのタイミングがベストだったと思います。これはファンの間では有名な話ですが、かつてシューマンの幻想曲をやったときに、準備不足の演奏をしたとして、当時のマネジメントであった石井宏氏に思い切り叱られたこともありました(笑)。 実は最近、そのときのように消化不良の演奏が増えていたことも確かで、これは彼があれもこれもと手を出して、いろんな曲をやりたいというのが一因だったと思います。(もちろん彼はそれで聴衆を楽しませたいと思っているのですが)

4.単純に曲、編曲が良い
やはり、知らないマイナーな曲であっても、ベートーヴェン作曲ですから、ポーランドの駅の名前になってます作曲家やショパンの弟子っこ曲よりも魅力的です。弟子っこ曲ずらずら並べられて、楽譜を見ながら淡々と弾かれても、やっぱり音楽的に没入度合いが少ないですよね。こういうマイナーな曲はCDならいいですが、コンサートでは正直キツイです。今回はベト曲で、トランスクリプションも編曲がいいですね。やっぱり編曲は自分でやらないほうが客観的でいいのでは?(笑)

そういうわけで、もう正直、ここまで自分の中で「手のひらクルックル」するとは思いませんでしたが、まだまだカツァリスは現役で活躍してくれることを確信しました。そして、また来年も複数回来日してこの素晴らしいベートーヴェンプロをやってくれるということなので、また追っかけしたいと思います。

最後に少し苦言を。

1.冒頭の即興演奏イラネ。今回のようにコンセプトがはっきりしている(ベートーヴェンの最初の作品に始まり最後の作品で終わる)のだから、最初に即興演奏やったら雰囲気壊れるのでは? ましてクリスマスやら夕焼け小焼けなんて弾く必要ないです。即興演奏は、アンコールでお願いしやす。

2.会う日本人みんなに「ZOZOの前澤さんを知ってるか? 紹介してくれ」というのはやめましょう。月に一緒に行きたいのはともかく秘書に作った曲を送ってもそりゃリアクションないでしょ。本当につきに行きたいならまずダイエットしてください。行くのが決まったらダイエットするって、誰が信じるかよ! 前澤さんと月に一緒に行くより、ゴーリキ狙いのほうがまだワンチャンあるで。

日々是カツァリス2019:12月11日 カツァリス&広瀬悦子デュオ

もはや記憶の彼方に消し去ってしまった悪夢の上海遠征から1ヶ月少ししかたってない中での今年3回目の来日公演。
もともとこの12月は、このデュオが中心の予定だったのですが、来年のベートーヴェンイヤーの先取りプログラムを浜松でやるかと思えば、昨年台風でキャンセルになった豊田や茅ヶ崎では今年のフレンチプロの置き土産のように謝肉祭までやる始末。
ちょっと、いくらなんでもとっちらかりすぎてるんじゃないの?と思いつつ、まあ二人で弾くんだし、大丈夫かなと参戦。

場所は聖地、浜離宮朝日ホール。
客入り、いつものソロよりも明らかに少ない・・・。

プログラムは、来年のボンでのベートーヴェンフェスト2020での演奏予定曲と同じ。

ベートーヴェン:合唱幻想曲(ハンスフォンビューロー編曲)
ベートーヴェン:第九(リスト編曲) いずれも2台ピアノ用の編曲
前半の合唱幻想曲は広瀬悦ちゃんが1st、カツァリス2nd、後半の第九が逆になりました。

さて、合唱幻想曲は省略するとして、第九なのですが・・・。

カツァリスといえば、リスト編のベートーヴェン交響曲全集を80年代から90年代にかけて完成させ、ピアノレコード史上の偉大な金字塔を打ちたてたわけですが、当時の特に日本の批評家の酷評にも負けずやりきったその意義は、単に珍しいだけではなく、目を見張る超絶技巧はもちろん、完成した交響曲の演奏がオケ演奏には真似できない魅力に溢れていたからでした。80年代のベートーヴェン交響曲の演奏といえば、まだまだ巨匠が幅を利かせていて、フルオーケストラ編成で重厚にやるのが当たり前だった時代に、オケでは考えられないスピードで疾走感を持って作り出す新しいベト交の魅力にやられたのです。テンポだけで語るわけではありませんが、ベト交は、その時代時代において新しい時代を切り開こうとする演奏家たちが覚悟を持ってのぞみ、その結果、それからしばらくの演奏トレンドを決めてしまうような試金石となるものです。ご存知の通り、その重厚な巨匠演奏から、古楽器陣営のブリュッヘン、ガーディナーにはじまり、それを現代オケの演奏に取り入れ始め、ジンマン、ノリントンの演奏が人気に、そしてベーレンライター改訂版の使用が一気に広がって以降、真打ラトルがウィーンフィルと2000年に現代版ベト交演奏を確立したといってもいいかもしれません。その後、サロネン、パーヴォ・ヤルヴィなどもそれぞれの代名詞ともいえる演奏はベトになっています。新しいところでは、ベルリンフィルの新シェフとなった、キリル・ペトレンコがこの夏披露した第九など、もはや以前のベルリンフィルには戻らないという訣別宣言ともとれる演奏でしたし、今年出したネルソンスとウィーンフィルの演奏もそれなりの意欲が感じられるものでした。

カツァリスの演奏の話しに戻しますと、多重録音かと疑われたくらいのかつての「ひとり第九」の演奏は、オケ演奏と比べて物足りないなどと思うことなく、完全に曲の素晴らしさを表現できていたわけで、つまりなにが言いたいかというと、
「一人で演奏して、新しい時代を切り開いたことがある人が、いまさら二人で演奏する意味はあるのか」
ということです。

もちろん、1人か2人という人数だけで議論しているわけではありませんが、2人で演奏するならば、1人ではできなかった何か新しいことを見つけられなければ、いまさらやる意味はありません。
ではそれがあったかといえば、そこまで大げさではないものの、まあ、第4楽章の1人ではどうにもできないような苦しい箇所はさすがに2人になったことで楽にはなっています。さらに、ピッコロが大活躍するところ(盛り上がって途切れたあとマーチで再開するところ)では、カツァリス得意の高音コロコロ演奏で美音が際立ち、そこははっきりと2人で弾いたからこそ、という部分もありました。
しかし、全体的に言えば、特に第1・2楽章は、特に2人で弾くことによる特筆すべき効果がある部分はすくなく、実際に一方が弾いてるうちは一方が休むことが多く、それはリストの編曲がそうなっているから仕方ありませんが、そうすると二人の音色、音の大きさの違いが埋め切れないような印象が残りました。これは普段からずっと一緒に活動しているようなデュオでないとできないことかもしれません。

では、当日の演奏がつまらなかったかといえば、決してそうではなく、第九を丸ごとピアノで楽しめたという充実感はあります。特に広瀬さんはやはり上手く技術も文句ないし、どちらかといえば終始カツァリスをリードしてくれていましたし、カツァリスも大忙しの中、それに応えるだけの着実な演奏はしてくれましたが・・・。

さて、この二人の第九ですが、もうレコーディングも済ませているそうなので、来年いつかのタイミングで発売されるのでしょう。そして、本番は来年9月のボンのベートーヴェンフェストですが、間違いなく、今年のヨーロッパ音楽界のハイライトは、このフェストで行われるクルレンツィスのベートーヴェンチクルスなので、それに埋もれないようにそれまでにもっと二人で熟成させてほしいなと思います。(この後日本以外でやる機会はあるんだろうか?)
いずれにしても、今回はある意味、広瀬さんに感謝ですし、来年もよろしくお守をお願いしたいです。

ちなみに、クルレンツィスとムジカエテルナは4月13-14日にサントリーホールでベートーヴェン第7と第9を演奏しに再来日してくれます。私は、何があっても絶対に行きます。時代が変わるベト交が演奏される予感がします。

日々是カツァリス2019番外編:11月2日 上海公演遠征

ソウル、北京に続いて3回目の海外遠征は上海です。
海外までおっかけていく気力なんてもうないと思ってたんですが、中国国内ツアーのプログラムが鹿児島と同じと知り、もうスケルツォも英雄ポロネーズも日本で弾くことはないだろうし、もしかしたらこれが最後かもと思い、決意。
いつものおっかけ三人衆での遠征となりました。
今回現地ではとにかく森岡さんの旦那様にお世話になりっぱなし。 上海着の夜がまずこれですもん。
どーーーん、はい、キタ! 上海蟹!!! 

でもって、パッカー!
 
オス、メス両方堪能!!! クリーミーでまったく臭みないし、基本、生魚、魚卵系苦手なわたくしですが、ペロリ。 オスのほうが好みでしたわ。

その後、上海といえば、この夜景。 

なかなかいい雰囲気ですが、40代男、50代、ゴホゴホ(以下自粛)

翌日、昼からゆっくり観光。旧市街地、激混み。

夜は早めに食べてからコンサートに行こうということで。上海なのに北京ダック!

実は2010年の北京ツアーのときに食べた北京ダックがとても美味しく記憶に残っていたのですが、そこの同じ系列のお店があるということで。
北京の食べ方での北京ダックはこのように皮だけではなく身も食べます。(これは2010年の写真)
森岡さんによれば、このような北京風の北京ダックの食べ方は南の人からは品が無い食べ方といわれてるそう。(皮だけ食べるのが粋ということか?)
今回食べてもやっぱり美味! 皮と身の間の油がジューシーでいくらでも食べられる!
で、このお店、実は日本にもあるそうで。銀座、新宿、六本木に3店舗あるこのお店です。。。
全聚徳(ゼンシュトク) 超、高そう、実際高い! 
でも上海では1人1500円くらいで腹いっぱいでしたよ! 最高かよ!!

腹いっぱい、満腹、眠い、ホテル帰って寝たいわー まあ、でも、行くかー  会場入り口、なんか高級クラブ風。

コンサートのチラシ  なんでこんな大昔の写真? 詐欺じゃんw ベヒを弾いてる写真かもな。
それに、コンサート会場でもプログラムとか配られないし、これだけでは、ショパンの曲はともかく弟子曲弾いたら何がなんだか分からないのでは? 
 

一応、本当にコンサートに行ったという証拠写真。
 
今回も、ベヒシュタインお抱えツアーなので当然ピアノはベヒたん。
ベヒたんは今回チケット招待してくれたので悪口は言わないw(てか、客層からするとほぼベヒ宣伝の招待客なんじゃね?)

曲目は、鹿児島と少し違ってました。
即興演奏 ショパン:プレリュード Op.28-20
ショパン:ノクターン No.2 Op.9-2
フォンタナ:マズルカ Op. 21 No.2
フォンタナ:華麗な大ワルツ Op.11
ショパン:マズルカ Op.17-4
テレフセン:ノクターン No.2 Op.11 / No.4 Op.39 / マズルカ Op.3-3,4
ショパン:バラードNo.1
フィルチ:マズルカ、舟歌、さようなら!
以上、前半は鹿児島ではなかった即興演奏を頭にやって、曲順がちょっと変わっただけで同じ。
感想はまあノーコメント。座る位置が悪かったのかと思ったので、後半から空いてる最前列に移動。(みんな空いてるとガンガン移動していく!)

で、いよいよ後半。
ショパン:スケルツォNo.2
ミクリ:48のルーマニア旋律
ショパン:ワルツNo.7 Op.64-2
ショパン:幻想即興曲
グートマン:華麗なギャロップ、ポロネーズ
ショパン;英雄ポロネーズ
アンコール モニューシュコ:ワルツ
幻想即興曲が入って、弟子曲を少しカット。アンコのモニューシュコは同じ

さて。

さて。。。

まじでびっくりした

何をびっくりしたって?

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
 
「カツァリスが死ぬ、やばい! ああやばい!と 

思ったら いつのまにか終わっていた」
 
な… 何を言っているのか わからねーと思うが

おれも 何を見たのか聴いたのか わからなかった…

頭がどうにかなりそうだった… 演奏技術だとかピアノの質だとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…

そんなわけで、ちょっとしたアクシデントがあったのですが、カツァリス本人から、「書くな」「書いたら、ヤクザ、バーン」と脅されているので言えません。。。
それだと読んでくださっている方は気になるでしょうから言える事として・・・。
やはり今回、ベートーヴェンプロが迫っている中、ハードスケジュールで準備不足&極度のお疲れであったのだろうと推測いたします。
目がおかしいらしいので安静にしてほしいです。
以上。

気を取り直して翌日帰国日。
また豪勢なランチ。

ここでもまた上海蟹、そして上海焼きそば最高に旨かった!

いろいろ考えるところもあったし、年末、来年のベトプロどうなるんだろうと不安も実はありますが、旨いもの食ったツアーとして良い思い出となりました。
同行の皆様、上海の皆様、お世話になりました!

日々是カツァリス2019:7月19日鹿児島公演(霧島国際音楽祭)

少し時間がたってしまいましたが、鹿児島公演の振り返りを。

「来た」「見た」「弾いた」

と、ユリウス・カエサル風にいえばこうなるのでしょうが、久しぶりの遠征。なんのために鹿児島まで遠征したかといえば、もちろん、この件。
ショパンのバラード1番、スケルツォ2番、英雄ポロネーズというこの3曲をコンサートで弾くというサプライズ。いや、もう当日まで信じられなかったです。ホールに入って、まず確認したのはプログラム。

プログラムは、ショパンの弟子曲とショパン曲を交互に弾くスタイル。カツァリスがなにかテーマがあるときにはこういうプログラミングが多いんですが、こういうときってムダに長いんだよなー。

ショパン弟子の曲はあとでまとめてコメントするとして、前半のハイライトはバラード1番。いうまでもなく、初披露。バラードは「ショパンを弾く」の模範演奏で3番を披露したことがあり、コンサートでも2番は2015年に披露しているますが、どうしても名盤誉れ高いテルデック盤の演奏と比べてしまいます。30数年前の演奏とくらべても、意外にテンポも速く、あっさり目。カツァリスってはじめて弾く曲ってこんな感じになるわねと。
前半はちょっと試運転だったのか、またとにかくピアノが鳴らずに、ホールもデッドな音響でちょっとつらかったです。あと、ショパン弟子分が長いよ。

後半はいきなりのスケルツォ2番からスタート。いやもう感無量。まじで弾いたよ。ちょっとフラっとしたとこもあったけど、無問題。無事弾き終わり、「この曲をコンサートで弾いたのはこれが初めてです。ここ鹿児島で」とうれしそうに舞台上から話すカツァリス。今日はよく喋るなー、でも普通そんなこと喋るか(笑) 
お得意のワルツ64-2はもう手馴れた感じでいつもの内声えぐり炸裂。年々極端になっていってる気がする・・・。
で、最後の英雄ポロネーズ。もう正直言えば、30年前いや20年前に弾いてくれていれば、と思わないこともないですが、68歳にして初弾、チャレンジしてくれたことに感謝。願わくば、今後ももっと弾きこんでほしいなと。細かいところではCDでやってたことや模範演奏のときとは違うところも多くて、その変化はちょっと興味深いのですが、なにせ1回聴いただけではわからんです。。。
後半は前半よりもピアノの鳴りも良くなって、盛り上がり終了。

アンコールは予想通り、今年イチ推しのモニューシュコのワルツ変ホ短調。しばらくアンコールはこれでいくに違いない。
その他、ショパン弟子では、テレフセンのノクターンが秀逸。フィルチは一番ショパンっぽかった。グートマンのポロネーズはこれがあったから、このあと英雄ポロネーズを弾いたのかと思うような感じ。
全部でコンサートは開演から2時間10分こえたので、ちょっと前半が長いような気がしますが、ショパンの3曲聴けただけでも遠征の甲斐あり。
でも、雨、湿気もあってか、前半とくに響かず、浜離宮などの室内楽専用ホール以外のホールでは、ヤマハではなくスタインウェイを使ってほしいなー。

カツァリスは、この鹿児島でのコンサートの後、霧島音楽祭のマスタークラスへの参加となる予定でしたが、8月21日のガラコンサートでソプラノのアンドレア・ロストが出演をキャンセルしたため、急遽ピンチヒッターとしてグリーグ、シューベルトを弾いたそうです。

その霧島も無事終了し、まるで追加公演のように、このプログラムは8月5日に大阪でもあるのですが、再び、遠征すべきか・・・。

アーカイブ