ディスコグラフィー : 1970年代 若き日のカツァリス(DG/EMI/Decca他)

1970年代 若き日のカツァリス(DG/EMI/Decca他)
1980年代 TELDEC時代のカツァリス
1990年代 SONY CLASSICAL 時代のカツァリス
1993年 「ショパンを弾く」のカツァリス
2000年代以降 PIANO21時代のカツァリス
2000年代 その他の録音
未発売音源・映像

1972年

廃盤LP
DG 2563215

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

ルネ・ドゥフォセ指揮
ベルギー国立管弦楽団

録音時期:1972年5月31日
録音場所:パレ・デ・ボザール・コンサート・ホール(ベルギー、ブリュッセル)

《管理人の独断による推薦度》B
買うのであればPIANO21からの復刻盤のほうで・・・

1972年5月31日の9位に終わったエリザベートコンクールのライブ録音。
演奏としては、かなり元気よく弾き飛ばしている。ライブだけにオケの荒さなどが気になるが、臨場感はあり、なにより曲が終わらないうちにわきあがる拍手と歓声は、コンクールの結果がいかに理不尽だと観衆に思われたか想像がつく。ぜひ録音しなおしてもらいたい曲だが本人の中ではすでに終っている曲らしく、なにがあっても現在は弾く気がない模様。
同曲異演盤として1978年に南西ドイツ放送交響楽団と演奏したときの放送録音で2006年にPIANO21から発売されたものがあるが本人もお気に入りの様子(カツァリスアーカイヴスVol.1「ロシアン・ミュージック」P21020-A)。ジャケットのドイツグラモフォンの黄色ラベルが妙に眩しいがDGからのリリースはこれと4人のピアニストと共演したストラヴィンスキーの結婚のみ。このLPの原盤は手に入れるのはまず無理だったが、2014年2月に原盤権を買い取ったPIANO21から、CD化されて再発売。その際には他の同じコンクールで演奏したショパンポロネーズ5番、ルデュックピアノ協奏曲が追加収録されている(P21047A)。
1972年
廃盤LP
Decca 774-173003X
モーツァルト:ソナタK333
リスト:ソナタロ短調

録音時期:1972年6月6日
録音場所:ベルギー

《管理人の独断による推薦度》C
両曲ともにカツァリスの録音としては貴重だが・・・

エリザベートコンクールの直後にレコーディングされすぐ発売された。コンクールの入賞記念として、ベルギーのデッカによって作成された事実上のソロデビュー盤。(実際の発売はコンクール直後に発売されたためにDGのラフマニノフコンチェルトより早い)
モーツァルトはテクニックがあるところを感じさせるが、後の彼のモーツァルト演奏のような余裕と遊びが感じられず、お世辞にもいい演奏とはいえない。リストのロ短調も達者だが正攻法で弾いており、後のカツァリスの自由奔放さはうかがえない。カツァリス唯一のDeccaへの録音。
モーツァルトK333はこの録音のみ、リストソナタロ短調は、その後2011年にPIANO21から発売された「カツァリス・プレイズ・リストVol.1」(P21041-N)に1973年演奏のプライベート録音が収録されている。このLPはCD化されておらず、LPもかなり手にはいりにくい。
1973年
廃盤LP
EMI C61-94660
Jステーマン:ラヴェルの墓(世界初録音)
Jステーマン:6つのブルレスケ(世界初録音)
ガーシュイン:前奏曲No.2
シェデリン:フモレスケ
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
メシアン:愛のまなざし

録音時期:不明
録音場所:不明

《管理人の独断による推薦度》C
うーむ、なんとも・・・

正式契約したEMIへのデビュー盤。ジャケットには、エリザベートコンペティション入賞者というステッカーが貼ってある。
なんでもありの選曲だが、アルバムとしての統一感はなぜかある。シュデリンというのはロシアの作曲家らしいが、ジャケットには「詳しくは不明」と書いてある。Jステーマンという作曲家はエリザベートコンクールの特別審査員だったようで、その関係での録音なのか、裏ジャケットにはカツァと本人が仲良く写っている。演奏はひたすら真面目に弾いており、最後のメシアンはPIANO21のフランス音楽集に収録されている1988年の演奏とくらべれば歴然でカツァリスの成長の度合いが良く分かる。このころはまだ青くて、少し達者なピアニストという感じだったのか?。このLPもCD化されておらず、LPの入手は困難。
1973年
廃盤LP
EMI C61-94981
リスト:超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」(S.139-4)
ハイドン:ピアノソナタ第35番 ハ長調
ブラームス:2つのラプソディー第2番 Op.79-2
シューマン:蝶々
プロコフィエフ:トッカータ Op.11
ショパン:エチュード Op.25-7

《管理人の独断による推薦度》C
このLPの最大の特長はジャケット。写真なのか絵なのか・・・

1973年の録音。このLPはいまでもカツァリスのレパートリーになっている曲も含むまだ理解可能(笑)なアルバム。
カツァリス唯一のリスト超絶技巧練習曲からマゼッパを収録。ハイドンのソナタはいまでもレパートリーとなっている35番。というよりこれしか弾かないが。なぜか、珍しいショパンエチュードからはOp25-7という、らしい曲目。プロコフィエフは得意のトッカータだが、後にテルデック盤に収録されるライブ盤のほうが数段魅力的。シューマンの蝶々はPIANO21から発売されたシューマンアルバムで再録音され発売されている。
このLPもCD化されていない。
1974年
廃盤LP
EMI C61-95136

1990年
CD
PAVANE ADW7060-2

2018年

モーツァルト:6つのウィーンのソナチネ K439

録音時期:1974年
録音場所:ブリュッセル

《管理人の独断による推薦度》B
PAVANE復刻されたCDなら

1974年録音。原曲は木管楽器のためのディベルティメント、世界初録音。
当初はEMIで発売されたものの廃盤。どういうわけかベルギーのマイナーレーベルPAVANEに原盤権が移り、1990年にCD化。その後、若干手に入れにくい状況になったが、最近になって再復刻。
演奏は、若々しく軽快で意外に楽しめる。
1978年
廃盤LP
EMI C069-14074
2007年
復刻CD
EMI CDZB 69561
シューベルト:3つの即興曲 D.946(No.1、No.2、No.3)
シューベルト:アレグレット D.915
シューベルト:ギャロップ D.735
シューベルト:コティリオン D.976
シューベルト:ディアベリのワルツ変奏曲 D.718
シューベルト:12のレントラー舞曲 D.790

録音時期:1975年
録音場所:パリ

《管理人の独断による推薦度》C
お薦めしたいものの、CDは50枚組の中の1枚なので・・・

何度も日本公演で披露している即興曲D946から始まる演奏は極めて魅力的でほとんどいまのカツァリスの演奏とくらべても違和感は無い。小品も彼らしいうまさで仕上がっており、なかなかのアルバム。このころになると、EMIもそれなりの扱いをしてくれていたのか、ジャケットも豪華になった。
LPは廃盤だが、2007年にEMIのシューベルトコレクターズCD50枚組の中の1枚としてCDで復刻。
1978年
廃盤LP
EMI C18116298-9
スクリャービン:10のマズルカOp3
スクリャービン:9つのマズルカOp25
スクリャービン:2つのマズルカOp40
スクリャービン:2つのマズルカ(遺作)
スクリャービン:即興曲Op2-3,Op7-1,Op7-2
スクリャービン:疲れた踊り/ポロネーズOp.21
スクリャービン:ワルツOp38,Op1,遺作
スクリャービン:2つの舞曲 Op73

《管理人の独断による推薦度》B
PIANO21のCDでなら

1977年録音。カツァリス初のスクリャービン録音。
カツァリスには向いていると思うのだが、可も無く不可も無く。もっと自由奔放にやっていいのにと思うのだが、いたって優等生の演奏。舞曲系のリズムの取りかたなどは、彼らしい。
2007年にPIANO21からCDで復刻されて音がかなり改善され、印象はかなり良くなった。
1983年2月
廃盤LP
EMI EAC90130
 
2006年
復刻CD
EMI TOCE13264
 
2016年
SACD
TOWERRECORD TDSA-23
リスト(チャイコフスキー編曲):ハンガリア協奏曲
リスト:ハンガリー幻想曲
シューベルト(リスト編曲):さすらい人幻想曲 D.760

ユージン・オーマンディ指揮
フィラデルフィア管弦楽団

録音時期:1981年10月
録音場所:フィラデルフィア

《管理人の独断による推薦度》S
カツァリスの協奏曲録音では文句なしのNo,1。若き日のカツァリスの強靭な音、テクニックを堪能できるおすすめの1枚。

カツァリスEMIで初の協奏曲録音、そして国内ではこれが正式なデビュー盤。(ここまでのLPは国内では発売されていない)
ハンガリア協奏曲というのは長い間謎とされてきた「リスト第3ピアノ協奏曲」といわれていて、リストが弟子のために書いた曲を弟子がチャイコフスキーに依頼してオーケストレーションを完成させたという珍曲。もちろんこの曲は当時世界初録音。
しかしなんといっても、N響や日フィルとも来日公演で披露した「ハンガリー幻想曲」は何度聞いても爽快。完璧なテクニックと推進力、軽々と弾き飛ばすカツァリスの本領発揮といったところ。ピアノは、この後テルデックに移籍した後にベートーヴェン交響曲の録音などで大活躍する特注のマークアレンがこの録音で初登場。鋼のような音で圧倒。これも実演でよく披露する、さすらい人幻想曲も収録。
そして、いうまでもなく伴奏をつとめる巨匠オーマンディが指揮する名門フィラデルフィア管弦楽団の豪華なサウンドはこの後のカツァリスが共演者に恵まれないことを考えても出色の出来栄え。
名盤だが長い間オリジナルのLPが廃盤になっていたが、2006年2月に国内EMI盤でCD化されたあと、2007年にはPIANO21からもCDで復刻された。2016年にタワーレコードオリジナル企画として「ユージン・オーマンディ In Memoriam」というオーマンディCD3枚組の中の1枚としてSACD化。

非公式盤
OPUS
9110 0788-89

ラフマニノフ:前奏曲 Op.23 No.5
ラフマニノフ:前奏曲 Op.23 No.4
ラフマニノフ:前奏曲 Op.3 No.2
リスト:ベートーヴェンのアテネの廃墟による幻想曲 S.389

《管理人の独断による推薦度》C
なかなか手にはいらないので。

ユネスコ関係のライブ盤。いわゆる海賊もの扱いだが、アテネの廃墟による変奏曲は、超絶技巧爆発でかなり良い演奏。しかし、市販用にCD化されておらず、2004年にフランスの音楽雑誌Piano Magazineの43号付録CDに収録されただけ。
ラフマニノフの前奏曲3曲は、2006年にPIANO21からのロシアンミュージック(カツァリスアーカイブ集)に収録され、正式発売された。

プライベート盤

リムスキーコルサコフ(シフラ編):熊蜂の飛行
モーツァルト:ウィーン風ソナチネNo.2第1楽章
グリーグ:叙情小曲集よりOp38-2
ショパン:ワルツNo.3
プロコフィエフ:前奏曲Op.12-7
プロコフィエフ:トッカータ
リスト:ピアノのための小品No.1

《管理人の独断による推薦度》C
いまからでは絶対手にはいらないが、最大の聴きどころである熊蜂の飛行はテルデック盤で聴けるので。

1975年6月20日のフランスのノアンでのライブ録音をシングルレコードにして関係者に配布したと思われるプライベート盤。熊蜂の飛行とプロコフィエフの2曲は、テルデックからのライブ集やPIANO21から発売されたアーカイブシリーズのロシアンミュージックに収録されている。

ライブ盤

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番

トーマス・ザンデルリンク指揮
ジョルジェ・エネスク国立フィルハーモニー管弦楽団

《管理人の独断による推薦度》C
なかなか手にはいらないので。

1991年9月のエネスクフェスティバル出演時のライブ盤。

ライブ盤
CA 755435

《NUIT DE LA QUATRA 74-75》

リスト:メフィストワルツ第1番 S.514
バッハ:ラルゴ(ピアノ協奏曲BWV1056)

《管理人の独断による推薦度》C
なかなか手にはいらないので。

1975年5月23日パリ・ギメ美術館でのライブ録音。
AAAA(Association of Armenian Artistic Action)主催による1975年のライブの一部に出演したときの非売品LP。

このときの出演についてカツァリスによれば、この年1975年4月24日に例のシフラの前で演奏した熊蜂の飛行のTV生放送があり、それをみたアルメニア人アートディレクターのグレゴール・ハンパルツォミアン(Gregor Hampartzoumian)が急遽依頼してきたとのこと。ライブのタイトルは「NUIT DE LA QUATRA(クアトラの夜)」となっており、クアトラというのは1972年にこのハンパルツォミアンが設立した「アルメニア芸術活動協会」のこと。

ちなみになぜカツァリスに依頼があったかといえば、このTV放送があった4月24日というのはアルメニア人にとって重要な20世紀初頭にあったオスマントルコによる「虐殺記念日」らしく、カツァリスの演奏に感激したことに加え、この前年1974年にトルコによるキプロス侵攻があり、カツァリスを同じトルコによる被害国出身者としてシンパシーがあったということらしい。

演奏については若きカツァリスの才気あふれる元気のいい演奏で、しかも生演奏のメフィストワルツ第1番というのは非常に珍しく貴重な記録。