PIANO21新譜情報: カツァリス 111 ピアノヒッツ

以前に年末くらいに発売されそうとツイートしましたいわゆる名曲集ですが、とうとう5枚組で発売されるようです。
なかなか面白い内容なので、ちょっと興味深いところを青でコメントします。
曲目フォーマットはタワーレコードよりコピペ。

タワーレコード→http://sp.tower.jp/item/3732809/Katsaris—111-Piano-Hits
HMV→http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E4%BD%9C%E5%93%81%E9%9B%86_000000000017977/item_Katsaris-111-Piano-Hits_6037615

『シプリアン・カツァリス 111・ピアノ・ヒッツ』

<CD 1>
J.S.バッハ:前奏曲第1番ハ長調 BWV.846(平均律クラヴィーア曲集第1巻より)
グノー(グノー編):アヴェ・マリア*
アディンセル(ギール/カツァリス編):ワルソー・コンチェルト*
ショパン:ポロネーズ第6番変イ長調 Op.53 《英雄》
シューマン:兵士の行進(子供のためのアルバム Op.68より)
ブラームス(ムーア編):子守歌 Op.49-4
タレガ(ペンソン編):アルハンブラの思い出
アルビノーニ/ジャゾット:アダージョ*
ショスタコーヴィチ(ノアック編):ワルツ第2番*(ジャズ組曲第2番より)
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56
シューベルト:ワルツ第10番(12の高雅なワルツ Op.77, D.969より)
ヨハン・シュトラウスII世(パラフレーズ:シュット):ウィーンの森の物語
グルック(チェイシンズ編):メロディー(バレエ音楽《オルフェウス》より)*
マスネ(マスネ編):瞑想曲(歌劇《タイス》より)
ショパン:練習曲第12番ハ短調 Op.10-12 《革命》
カツァリス:日本の歌《さくら》による即興曲*
エルガー(シュミッド編):行進曲《威風堂々》第1番Op.39-1*
ヘンデル(即興アレンジ:カツァリス):サラバンド(組曲第11番ニ短調 HWV.437より)
C.P.E.バッハ:行進曲ニ長調 BWV.Anh.122(アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳より)、ソルフェジエット ハ短調 H.220, Wq.117:2
ゴットシャルク(カツァリス編):バンジョー ~ ゴットシャルク・ファンタジー, アメリカン・スケッチ

名曲集らしく、ワルソーコンチェルト、ブラームス子守唄、アルビノーニのアダージョ、あたりは新録音かと。
あとシュット編ドナウではなくウィーンの森の物語ならこれも新録音か?
その他、革命、英雄ポロネーズは、既存のCDからの収録だと思われます。
ゴッドシャルクもバンジョー以外は新録音ですね。

<CD 2>
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
ハイドン(クレメンティ編):第2楽章 アンダンテ(交響曲第94番ト長調 Hob.I-94 《驚愕》*
クープラン:収穫をする人たち(クラヴサン曲集第2巻より)
シューマン:収穫の歌(子供のためのアルバム Op.68より)、楽しい農夫(子供のためのアルバム Op.68より)、トロイメライ(子供の情景 Op.15より)
シューベルト(リスト編):アヴェ・マリア Op.52-6, D.839
ラフマニノフ:前奏曲ト短調 Op.23-5
マルチェッロ(J.S.バッハ/カツァリス編):第2楽章 アダージョ(オーボエ協奏曲ニ短調 Op.1より)
メンデルスゾーン:春の歌 Op.62-6(無言歌集より)
シューマン:乱暴な騎手(子供のためのアルバム Op.68より)
ショパン:前奏曲7番イ長調 Op.28-7
ビゼー(ホフマン編):ハバネラ(歌劇《カルメン》より)*
ビゼー(編曲者不詳):ファランドール(劇音楽《アルルの女》より)*
作曲者不詳:メヌエット ニ短調 BWV.Anh.132(アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳より)
ブラームス:間奏曲第2番変ロ短調 Op.117
モーツァルト伝(カツァリス編):バター付きパン
シューベルト:コティヨン変ホ長調 D.976
スクリャービン:アルバムの綴り(3つの小品 Op.45より)
ベートーヴェン(リスト/カツァリス編):第4楽章 プレスト:アレグロ・アッサイ《歓喜の歌》(交響曲第9番ニ短調 Op.125より)
ショパン:ワルツ第7番嬰ハ短調 Op.64-2

カルメン、ファランドールというあたりは確実に新録音ですね。第九の四楽章などはテルデック音源でしょう。
シューマンの子供のためのアルバムってのは新録音かな。

<CD 3>
マンシーニ:ピンク・パンサーのテーマ*
サン=サーンス(ゴドフスキー編):白鳥(動物の謝肉祭より)
作曲者不詳:ミュゼット ニ長調 BWV.Anh.126(アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳より)
J.S.バッハ:アリア(ゴルトベルク変奏曲 BWV.988より)
リュリ:クーラント*
スカルラッティ:ソナタ ハ長調 K.159
ファリャ:火祭りの踊り(バレエ音楽《恋は魔術師》より)
オルフ(エリック・チュマチェンコ編):全世界の支配者なる運命の女神~1.おお、運命の女神よ – 2.運命の女神に傷つけられて(カルミナ・ブラーナより)
シューベルト:ワルツ第19番(36の独創的舞曲《最初のワルツ》 Op.9, D.365より)
ショパン:練習曲第3番ホ長調 Op.10-3 《別れの曲》
ラヴェル(シャルロ編):眠りの森の美女のパヴァーヌ(組曲《マ・メール・ロワ》より)*
モーツァルト:トルコ行進曲(ピアノソナタ第11番イ長調 K.331より)
ダンドリュー:小笛 – ロンドー
シューベルト:楽興の時第3番ヘ短調(6つの楽興の時 Op.94, D.780より)
ヴィヴァルディ(ファリーナ編):第2楽章 ラルゴ(ヴァイオリン協奏曲集《四季》 – 協奏曲第4番ヘ短調 Op.8, RV.297 《冬》より)*
ヘンデル(ツェルニー編):ハレルヤ(オラトリオ《メサイア》より)*
J.S.バッハ(カツァリス編):バディネリ~バーレスク・スタイル・アレンジ(管弦楽組曲第2番ロ短調 BWV.1067より)
シューベルト:ワルツ第35番(36の独創的舞曲《最初のワルツ》 Op.9, D.365より)
ワイル(編曲者不詳):タンゴ・バラード(歌劇《三文オペラ》より)*
カツァリス:韓国の歌《アリラン》による即興曲*、クリスマスの思い出(ファースト・ヴァージョン)~グルーバーの《きよしこの夜》による幻想曲*
ベートーヴェン:第1楽章 アダージョ・ソステヌート(ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2 《月光》より)
ドビュッシー:月の光(ベルガマスク組曲より)
シューベルト:軍隊行進曲第1番ニ長調 Op.51-1, D.733(リスト:演奏会用大パラフレーズ)
ワーグナー(ブラッサン/カツァリス編):ワルキューレの騎行(楽劇《ワルキューレ》より)
シューマン:間奏曲(ウィーンの謝肉祭の道化より)
プロコフィエフ:第3楽章 プレチピタート(ピアノ・ソナタ第7番変ロ長調 Op.83 《戦争ソナタ》より)

ピンクパンサー、きよしこの夜、月光1楽章、なんかはおそらくアンコールでのライブ録音ですね。
なにをおもっていまさらトルコ行進曲??? もちろん新録音です。
プロコ7番3楽章は新録音ではなく例の超ハイスピード演奏のライブ再収録だろ思いますが。
ワルキューレもソニー音源かな。あといくつか編曲ものも新録音がありそう。

<CD 4>
シフラ:演奏会用練習曲第1番(リムスキー=コルサコフの《熊蜂の飛行》による)
モーツァルト:第2楽章 アンダンテ(ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467 《エルヴィラ・マディガン》より)†
J.S.バッハ(カツァリス編):トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
チャイコフスキー:6月 舟歌(四季 Op.37aより)
ブラームス(カツァリス):ハンガリー舞曲第1番ト短調
ブラームス(レーガー編):第3楽章 ポコ・アレグレット(交響曲第3番ヘ長調 Op.90より)*
ルビンシテイン:メロディー ヘ長調 Op.3-1
ドリーブ(ドホナーニ編):ワルツ(バレエ音楽《コッペリア》より)
パッヘルベル(カプドヴィーユ編):カノン*
ショパン:前奏曲第16番変ロ短調 Op.28-16
ボロディン:夜想曲(小組曲より)
カツァリス:様々な主題による即興曲(ブラームス:ハンガリー舞曲第4番、オッフェンバック:歌劇《ホフマン物語》より 舟歌
モーツァルト:歌劇《魔笛》より 恋人か女房が
サン=サーンス:歌劇《サムソンとデリラ》より あなたの声で心は開く
ヴェルディ:歌劇《椿姫》より プロヴァンスの海と陸、他)*
任光(王建中編):彩雲追月
ラフマニノフ:第3楽章 フィナーレ(ピアノ協奏曲第3番ニ短調 Op.30より)‡

コッペリア、パッヘルベルのカノンとか新録音ですね。カノンをピアノ1台で普通に弾くのでしょうか?
他は割と既発売ものか、アンコールのライブ録音が多そうです。
即興演奏は上海のライブと思います。
最後のラフ3コンチェルトは先日発売されたエリザベートコンクールのものですね。

<CD 5>
ハチャトゥリアン(ソリン/カツァリス編):剣の舞(バレエ音楽《ガイーヌ》より)
サティ:ジムノペディ第1番
フォーレ(コルトー編):ドリーの庭(組曲《ドリー》 Op.56より)*
J.S.バッハ:ミュゼット ト長調(イギリス組曲第3番 BWV.808より)
ショパン(ショパン編):第2楽章 ロマンス – ラルゲット(ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11より)
シューベルト:レントラー第5番(8つのレントラー D.681より)
ブラームス:ワルツ第15番変イ長調 Op.39-15
ドヴォルザーク(カツァリス編):スラヴ舞曲ホ短調 Op.72-2
ベートーヴェン:バガテル第25番イ短調 WoO.59 《エリーゼのために》
マルティーニ(ビゼー編):愛の喜びは – ロマンス*
リスト:夜想曲第3番 《愛の夢》
メンデルスゾーン(メンデルスゾーン編):結婚行進曲(劇音楽《夏の夜の夢》より)*
チャイコフスキー(タネーエフ編):花のワルツ(バレエ音楽《くるみ割り人形》 Op.71より)*
グリーグ(グリーグ編):朝の気分(ペール・ギュント組曲第1番 Op.46)
ロドリーゴ(ロドリーゴ編):我が心のアランフエス(アランフエス協奏曲より)*
カツァリス:マイルドレッド・J&パティ・S・ヒルの《ハッピー・バースデー・トゥ・ユー》による幻想曲(ファースト・ヴァージョン)*
ガーシュウィン(ガーシュウィン編):ライザ(ソングブックより)
バーンスタイン(スミット編):ジェッツ、ジャンプ、チャチャ(ウェスト・サイド・ストーリーより3つの楽章)
ヴィラ=ロボス(グセー編):アリア《カンティレーナ》(ブラジル風バッハ第5番より)*
ピアソラ:ラ・ミスマ・ペーニャ*
カラスコ:アディオス

いくつか、日本でやったロシアプログラムのものが入っていますが、これがスタジオ録音かその公演のライブなのか、興味深いです。ガイーヌとか実はあの浜離宮公演で一回やっただけでどうも他では演奏していないようですし。
あと新録音では、結婚行進曲に、エリーゼのために??? なんかどうしてしまったんでしょうカツァリス。。。

こうみると半分以上新録音っぽいので、なかなか楽しみなアルバムです!
続きを読む

更新情報:Interviewコーナーに「メラニーとの対話」を翻訳追加

すみません、久しぶりの本サイト更新です。

去年のインタビューですが、You Tubeでも見られるインタビューを訳しました。

内容はそんなに目新しいものはありませんが、ちょっと業界に毒舌なところが見られます。

翻訳したものはこちらからどうぞ。


続きを読む

ウェブラジオ情報:BBC Radio3 に生出演と France musique で未発売音源

突然ですが、本日6月3日深夜0:30から、BBC Radio 3 にカツァリスが生出演します。

本人いわく、パリから駆けつけ、出演後すぐに戻る強行スケジュールの模様。

スタジオでは、生演奏もあるようで、なにより新譜の皇帝ソロバージョンがちょっと披露されるとのこと。

生で聴けなくても、おそらくアーカイブされると思います。

http://www.bbc.co.uk/programmes/b045byrm

それから、久しぶりに France Musique でカツァリス特集です。

すでにアーカイブされており、しばらくいつでも聞けます。

本人も出演しており、当然のことながらフランス語なのでよくわかりませんが、いろいろ話していますw

ここでは生演奏はありませんが、2つほど未発売音源がオンエアされています。(ショパンは?)

1つはファリャの火祭りの踊り。

これはYou Tubeにも上がっているのを紹介しましたが、10年以上前にFrance Musiqueが放送録音したものです。

もう1つが、詳細不明なのですが、ショパンのソナタ3番の2楽章。

これはプライベート録音と書いてありますが、ほんとでしょうか? カーネギーホールとも言ってるような気が。。。

http://www.francemusique.fr/emission/les-traverses-du-temps/2013-2014/cyprien-katsaris-pianiste-05-30-2014-19-00
続きを読む

PIANO21《シプリアン・カツァリス・アーカイヴス Vol.14》「エリザベート王妃国際音楽コンクール・ライヴ1972」から本人手記 「ブリュッセルの思い出」

ブリュッセルの思い出

 国際ピアノコンクールは数あれど、特別に権威あるものは3つか4つでしょう。ベルギーエリザベス王妃国際音楽コンクールはその1つです

 私はまず最初にベルギーに対しては、非常に鮮やかなマンガ絵に出会って親近感がありました。私は、たくさんのベルギーの偉大なアーティストの9人のマンガコレクションを持っています。例えば、エルジェ、フランカン、ペヨ、モーリス、ヤコブ、ファンデルステーンなどです。

 私がパリ音楽院で勉強していた1960年代、エリザベス王妃国際コンクールが注目され始めており、私は当時ほとんど経験がないのもかかわらず、1972年にエントリーを決意しました。私が1次審査のときに弾いたものは、ショパンエチュードOp.25-10,Op10-10、リスト超絶技巧練習曲4番マゼッパ、5番、ドビュッシー練習曲opposite sonorities、プロコフィエフ練習曲Op.2-4、ショスタコーヴィチソナタNo.1 Op.12、それにこれは主催者に感謝すべきですが、ヘンデルのsublime Suite もありました。これは、ほとんど弾かれることはないものです。

 27か国68人の参加者は、まず、24人に絞られました。審査員には有名なピアニストも多く、エミール・ギレリス、レオン・フライシャー、アニー・フィッシャー、モニク・ド・ラ・ブリュショルリ、などです。モニークはいうまでもなく私の先生でしたが、私に投票することは禁じられていました。あくまで公平に、ということで。

 二次審査では私は39度の熱をだしてしまいました。ブルガリアの審査員のLiuba Entchevaが私の額に手をあてて熱を測ってくれたことを覚えています。私は、リストのロ短調ソナタ、バッハの前奏曲とフーガNo.4、モーツァルトソナタk333、メシアンの愛の眼差し、ウェーベルン変奏曲Op.27を二次審査では弾き、ベルギーの曲では、Peter Benoit の第3,4番幻想曲を選択しました。二次審査での指定曲は、Paul Baudouin michelの難曲 Concentric variationsでした。

 そこから12人のファイナリストが選ばれました。ファイナリストは、オーケストラと自分で選ぶコンチェルトを1曲、ソロ曲で二次審査でのリストに入っていない曲を一曲、1972年にこのために作曲されたベルギー人作曲家のJacques Leduc のコンチェルトを指定曲として弾きました。私はラフマニノフの第3協奏曲とショパンのポロネーズOp.44を弾き、課題曲の20分間3楽章から成るコンチェルトをたった8日間で勉強して弾きました。幸いなことに暗譜する必要はなかったのですが、日本人の神谷郁代さんだけは暗譜したのです!

 私たちファイナリスト12人は、アルジャントゥイユというウォータールーの近くにある町に隔離され、最終審査に備えるという気が重い要求の準備をしました。私たちはみな、このJacques Leducのよく書けているものの難しいコンチェルトを練習するのに時間がなく、ほとんどパニックになっていました。しかし、みな日が経つにつれだんだんとマスターできました。
教訓:どうしようもなければなんとかなる!

 いよいよ最終日が始まりました。ソビエトからの参加者は当局が十分に準備させておりコンチェルトもコンサートで弾いているなどしていましたが、私はそれとは違い、ラフマニノフの第3協奏曲もほとんどはじめて演奏するようなものでした。TVやラジオも入り、無慈悲な審査員を前に、私のプレッシャーは最高潮でした。

 本番のDefossez指揮ベルギー国立管弦楽団とのリハーサルの前に1回だけマニュエルローゼンタール指揮のパリ音楽院の学生オケとリハーサルできました。私は何よりもDefossezとベルギー国立管弦楽団の働きぶりに感嘆しました。午前中に2人の参加者のコンチェルトを4曲(つまり2曲は選択した曲、課題曲を2回)やり、午後も他の2人と同様に4曲、一方同じ午後には、前日リハーサルした2人とも再度4曲リハーサルをします。そんな感じで12人で計24曲のコンチェルトを6日間でやり遂げるのです!

 1972年6月3日にようやく授賞式でした。審査員が舞台に並び、審査委員長Mr.Marcel Pootから順に名前が呼ばれていきます。呼ばれたら審査員と順に握手します。私は9位で名前が呼ばれやはり失望しましたが、2200人の聴衆のすごい歓声と審査員へのブーイングにより救われました。私は目を丸くしている審査員達に誇りを持って挨拶しました。これはTVとラジオでベルギーにて中継されていました。

 この驚くべき聴衆とメディアの後押しは、まだ鉄のカーテンが存在した当時の西ヨーロッパ側からの唯一の入賞者という満足な結果以上に、意味のあるものだったと言わざるをえません。Baudouin 国王は「この若いピアニストはほとんど革命だった!」と言ってくれました。

 現地を去る際は、ベルギー人ピアニストの Alex de Vriesの未亡人に車に乗せてもらいました。彼女を待っている間、私は彼女の友人であったエミール・ギレリスと彼女が話しているのに気づきました。ギレリスは車の中の私をみて、右手でお祝いの親指アップをしてきました。彼女が戻ってきて言いました。「ギレリスがあなたに“なんの心配もない。君は偉大なキャリアを築くよ”と言ってくれって」と。

 ギレリスがソ連のピアニストを優勝させなければ審査員を辞めると机をたたきながら脅したという噂がありますが、もうお分かりでしょうが、単なる噂でしかありません。

 私はアントワープへの帰りの電車で、この特別なコンクールの驚くべき人気を目撃し、いろいろな人々から声をかけていただいたことに深く感動していました。

 それだけでなく、コンクールが終了する前から、ベルギーDeccaのPaul Bertinchamps から私とDavid Livelyの2人はそれぞれレコーディングのオファーを受けていました。彼は私たち2人ともトップ3に入賞すると確信していました。Davidは6月5日に、私は6月6日の午前中になんとたった4時間半でモーツァルトソナタK333とリストのロ短調ソナタを録音しました。その日の午後には国王と王妃の主催するレセプションに出席しなければならなかったのです。

 6月9日には優勝者であるヴァレリー・アファナシエフのコンサートがあり、そのときにはレコードディストリビューターのAntonie に初めて会いました。彼は私のベストフレンドとなりました。それからベルギーDeccaはレコーディングからなんと3-4日で私たち2人のレコードを販売し始めました。また、ドイツグラモフォンベルギーはファイナル進出者のトップ3のコンチェルトのレコードを発売する予定でした。しかし、聴衆やメディアの後押しのおかげで私のレコードも発売することになりました。

およそ20年以上前に私はこの録音の版権を購入し、それがこのCDとなりました。

私はエリザベス王妃コンクールの関係者、ベルギー国立管弦楽団のみなさん、指揮者のDefossez 、ベルギーの聴衆のみなさん、メディア、すべてのベルギーの友人と忘れられない思い出を共有できたことに感謝します。

2012年9月4日 フロリダ
シプリアン・カツァリス

更新情報:Informationコーナーに「ブリュッセルの思い出」を追加

2月に発売された新譜「エリザベート王妃国際コンクールライブ」のCD解説に本人手記が掲載されていたので訳しました。なかなか面白かったです。

よく言われていた、ギレリスがカツァリスの優勝を妨害したという噂は本当なのか? はじめて本人が言及しています。

http://www.geocities.jp/txusui/information.html#Brussel
続きを読む

更新情報:ディスコグラフィーコーナーに「アーカイブシリーズ新譜」を追加

エリザベートコンクールライブCDをディスコグラフィーコーナーに追加しました。
まだアップしていませんが、CDの解説がカツァリスの手記になっていて、まあまあおもしろいので、訳したら載せます。

http://www.geocities.jp/txusui/discography.html#201402
続きを読む

速報:カツァリス ベートーヴェン交響曲チクルス決定!

30年間の沈黙を破り、とうとうカツァリスのベートーヴェン交響曲が帰ってきます!
しかも、自身初となる、全曲演奏会となります!

もはや伝説と言っても良い、カツァリスのベートーヴェン交響曲ピアノ版のテルデックリリースより約30年!
リスト編曲に補筆してさらなる完成度を目指したピアノ音楽史に燦然と輝く金字塔といわれるカツァリスのベートーヴェン交響曲はいまなお前人未到の快挙として語り継がれています。

しかし、カツァリスが実演で弾いたことがあるのは、3番英雄と6番田園、それに7番第2楽章のみ。80年代後半に英雄を弾きを終えて以降は事実上封印してしまいました。その後はどんなエージェントから要請されても弾くことはありませんでした。

それが、今年、なんと全曲演奏という形で実現することになりました! しかも、日本で!!!
世界が待ちに待った夢の企画が、現実のものになったのです!!!

当然ながらチケットは争奪戦です。
そのため、特別に広い会場での開催やチケット購入に条件がついているなどしていますので、注意してください。
詳細は以下の通りです。

【シプリアン・カツァリス 2014 真夏のベートーヴェン・チクルスアリーナツアー】

8月13日(水) ベートーヴェン交響曲第1番・第3番「英雄」 神戸ワールド記念ホール
8月14日(木) ベートーヴェン交響曲第2番・第5番「運命」 大阪城ホール
8月15日(金) ベートーヴェン交響曲第4番・第6番「田園」 日本ガイシホール
8月16日(土) ベートーヴェン交響曲第8番・第7番     横浜アリーナ
8月17日(日) ベートーヴェン交響曲第9番「合唱」     両国国技館
        (最終日のみ特別ゲスト・現代のベートーヴェン来場!)

5日間通し券 S席:¥400,000 A席:¥350,000
各日券    S席:¥90,000  A席:¥80,000

なんといっても、世紀のビッグプロジェクトだけに、ピアノリサイタルとしては、故ホロヴィッツの来日公演を抜いて過去最高額の入場料となりますが、安いものです!
しかも、うれしいのが最終日は両国国技館!
両国国技館といえば、かの伝説の天才ピアニスト、ブーニンも来日公演を行った、まさにピアノファンの聖地!
とうとうカツァリスが両国国技館に登場し、レジェンドとなるのです!

ここまで条件がそろえば、ソールドアウト間違いありません! チケット争奪戦必至です。
そのため、争奪戦を緩和するため、カツァリス本人の強い希望により、当日の来場者には以下の条件が付いています。

(入場制限)当日の入場は、ミニスカート(*1)の女性のみ

条件はついていますが、このような貴重な機会、聞き逃せませんね!
チケット発売が決定しましたら、お知らせいたします!

(*1)ひざ上15cm以上とする。なお当日会場入り口で係員により計測されることがありますのでご了承ください。
続きを読む

YOU TUBE 動画情報

浜松の感想も書かなくては、とおもいつつ、最近おもしろい動画がアップされているのであらためて紹介します。

まずは、ヴァイオリニスト、ユーディ・メニューヒンの70歳の誕生日イベントみたいなものにゲスト出演して、寸劇を見せてくれる動画。カツラをかぶって、F.リストに扮して、という趣向のようです。

この動画は、ずいぶん昔に、そんなテレビ番組が放送されたという情報だけ聞いたことがあっただけで、実際に目にすることができたのはこれがはじめてです。

メニューヒンの70歳といえば、1986年と考えられますが、この時期、カツァリスはまさに第一次黄金時代の序盤くらいで、新進気鋭の若手ピアニストだったわけですが、メニューヒンとのつながりはイマイチ謎です。
メニューヒンは晩年はニューヨークに住んでいたとのことですが、カツァリスのニューヨークデビューは1986年4月29日です。
メニューヒンの70歳の誕生日は、1986年4月22日ですから、このときに何か接点があったのかもしれません。

で、この動画ですが、寸劇部分は置いておいて、演奏部分は、なんと当時メインプログラムにしていて、NYデビューでも絶賛だった英雄交響曲(リスト編)の第一楽章を颯爽と弾いてくれます。

実は、今でもカツァリスといえば、ベートーヴェン交響曲ピアノ編曲版が代名詞なのですが、現存する動画はほとんどなく、田園と英雄の終楽章がドイツのTV曲に収録されているものがあるだけです。(もともと実演で弾いたことがある曲もこの2曲だけですが)しかし、この2曲は音はレコード(CD)音源をかぶせており、本当に」は弾いていません。つまり歌でいうなら口パク状態。そのため、この動画は唯一の生演奏でのエロイカということになります!

もう1曲は、これも機会があれば弾く、彼の自作(?)ハッピーバースデー変奏曲。テーマに合わせて、いろんな作曲家の風味でアレンジしていって転がる曲です。この曲は1993年に日本で発売された彼の楽譜集「吟遊詩人と姫君」の中に収録されました。この楽譜集、とっくに日本では絶版ですが、探せば簡単にインターネットに落ちてますので気になる方は探してみてください。

続いては、これもまた驚きの動画で、1979年のフランスのTV番組らしく、その他詳細はわからないのですが、司会者らしきオバサンのリクエストに応じて、カツァリスがスタジオで曲を弾くというようなもの。

驚いたのが弾いている曲。まず一曲目になんとショパンの革命エチュード。革命エチュードといえば、もともとエチュード嫌いなうえに、どんなにリクエストされてもコンサートで弾こうとしなかったものです。ようやくちょっと前にPIANO21からリリースしたショパンライブ集にスタジオ収録したものが入りましたが、まさかTVで弾いたことがあるとは!

1979年当時といえば、まだEMI時代でショパンのバラード・スケルツォ集もワルツ集もリリースされておらず、これといった色もついていないような時代、TV曲の求めに応じて弾いたのでしょうか。

そのあとは、ラプソディ・イン・ブルーやフランス国家を即興風で弾いたり、十八番のシューベルトリストのアヴェ・マリアを弾いたりと、いまのカツァリスと変わらないのですが・・・。

他には、動画ではありませんが、CDでリリースされていない音源を2つ。

シューベルトリストの歌曲ですが、最近は、主にアヴェマリアとセレナードしか弾きませんが、昔はこの鱒をメインプロの最後に弾くのがシューベルトプロの定番でした。

それから、これも昔はレパートリーに入っていたのにめったに弾かないファリャの火祭りの踊り。

まだまだ知らない動画、音源が世界のどこかに眠っているのでしょうか。。。
続きを読む

レコーディング情報 : これ完全にフライングですけど(情報解禁前)

下記のリンク先は、ビオラ奏者のHPなのですが、
http://www.stephenupshaw.com/events/

この人のスケジュールにASMIFの活動予定が入っており、

Academy of St. Martin in the Fields
April 5, 2014
Recording with pianist Cyprien Katsaris and Sir Neville Marriner.

と書いてあります。

これ、実は「皇帝」のレコーディングです。

このマリナー指揮でのオケ伴奏皇帝と楽団ひとりバージョンの皇帝でCDを、というわけですな。

こんなの書いていいんかいな。知-らないっと。
続きを読む

アーカイブ